税務署がAさんの“へそくり”を暴けた理由
では、税務署はなぜAさんが暗号資産を保有していることを把握できたのでしょうか?
実は、2020年度の税制改正により、暗号資産の証拠金取引について個人などに支払いが行なわれた場合、国内の暗号資産取引所に対し、誰にいくら払ったかを所轄の税務署に提出させることとなりました。
これに加え、日本の居住者が外国に銀行口座を保有するものは、OECD(経済協力開発機構)のCRS(共通報告基準)情報で、各国と税務当局との間で口座情報が共有されるのです。
税務署は、暗号資産の取引口座の情報をしっかりと捕捉しています。Aさんは亡くなった年に暗号資産を売却していたため、税務署は支払調書によって知ることができたのでした。
暗号資産取引に関する申告漏れ→追徴課税は増えている
国税庁の発表によると、令和4年7月~令和5年6月の令和4年事務年度における暗号資産取引に対する税務調査件数は615件、申告漏れ所得金額は189億円と、いずれも前年度を大きく上回りました。
1件あたり1,036万円という、多額の追徴税額となっています。富裕層に対する税務調査の場合でも、1件あたりの追徴税額は623万円です。
暗号資産の申告漏れが多額となる理由は、その税率にあります。暗号資産の急激な高騰によって利益を得た場合、所得税では雑所得の扱いで他の所得と申告を行うため、所得税と住民税を合計した55%が最高税率となるためです。
暗号資産の場合、申告漏れによる追徴税額が大きいこともあり、暗号資産取引は国税当局の重点調査項目となっています。このため、今後も暗号資産の申告漏れについては厳しく調査されることが見込まれます。
“知らなかった資産”が見つかった場合は?
今回のように、故人の暗号資産が見つかった場合、相続人はどのような手続きをとればよいのでしょうか?
国内の多くの暗号資産取引所は、金融庁に「暗号資産交換業者」として登録しているため、取引業者と次のようなやりとりをすることとなります※。
※手続きは業者により異なる場合があります。
①代表相続人が所定の書類(契約者の除籍謄本と代表相続人本人、手続き申請書類など)を揃えて取引所に提出する
②取引所が代表相続人に残高証明書などの書類を送る
③代表相続人が書類に沿って相続人全員の同意を示したうえで、相続の意向を取引所に伝える
④相続する場合は、残高が日本円に換金されて、代表相続人の指定口座に振り込まれる
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