基礎控除のいいとこ取り…「年間220万円」非課税にする方法
――2つの制度の違いや今年からの変更点がわかったところで、基礎控除の“いいとこ取り”をする方法を教えてください。
黒「実は、暦年贈与と相続時精算課税制度は、贈与者ごとに選択ができます。
これはつまり、『祖父からは暦年贈与でもらい、父からは相続時精算課税制度でもらう』といった使い分けができるということです。
祖父からは暦年贈与で年間110万円、父からは相続時精算課税制度で年間110万円の贈与をされるとしましょう。すると、どちらも基礎控除内ですので、合計220万円が非課税になります」
――なるほどなるほど。いままでは基礎控除は暦年贈与の年間110万円だったのに、今年からは倍の年間220万円が非課税になるんですね! ということは、複数人から相続時精算課税制度で贈与を受ければ、110万円×人数分非課税になるということですか!?
黒「残念ながら、それはできません。複数人から相続時精算課税制度を使って贈与を受けた場合には、110万円の基礎控除を、贈与を受けた金額で按分することになっています。
たとえば、同じ相続時精算課税制度で、父から700万円、母から300万円の贈与を受けたとします。その場合は7:3で按分して、父からの贈与のうちの77万円分と、母からの贈与のうちの33万円分が基礎控除として非課税となります」
――なるほど。基礎控除110万円を按分するんですね。
黒「同様に、暦年贈与についても、贈与する人が何人いたとしても、暦年贈与の基礎控除は合計で110万円です。したがって、何人から贈与を受けても、暦年贈与と相続時精算課税制度の2つの制度を合わせて最大220万円が基礎控除、つまり非課税枠となります」
――なるほど。非課税になるのは何人でも最大220万円ということですね。
相続時精算課税制度の「注意点」
――最後に、相続時精算課税制度で注意しなくてはいけないことを教えてください。
1.相続時精算課税制度を1度選択すると、暦年課税には戻れない
黒「1つ目は、相続時精算課税制度を1度選択すると、暦年課税には戻れないということです。
たとえば相続財産が多く、贈与時から7年以上生きた場合は、暦年贈与で贈与税を払って110万円以上の贈与をしたほうが、贈与税と相続税をトータルで考えたときにお得になることもあります。しかし、あとから暦年贈与にしとけばよかった、と思っても変更はできません。
――しっかり考えてから切り替えたほうがいいですね。
2.「相続時精算課税制度」で土地などを贈与した場合、「特例」を使えない
黒「もう1つの注意点は、相続時精算課税制度を選択して土地などを贈与した場合、相続税に関する「小規模宅地等の特例」を使うことができない、という点です。
この「小規模宅地等の特例」は、適用されれば相続税評価額が最大80%減になる、かなり節税効果の高い特例です。たとえ相続時精算課税制度を利用して贈与税がかからなかったとしても、小規模宅地等の特例が使えないことで、かえって相続税が高額になる可能性があります。
この選択は判断がなかなか難しいので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします」
<<社長の資産防衛チャンネル【税理士&経営者】の全編動画はコチラ>>
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】