一見よさそうだが…支援策の裏にある「重大な懸念点」
1.必要額約3兆元も、融資額3,000億元…買い上げ資金が「全然足りない」
一応、政策は出揃ったが、懸念点はいくつかある。まずは在庫買い上げの融資額3,000億元という点だ。
現地メディア「財新」の論評記事5/18付)によると、在庫消化(在庫消化期間を「合理的期間の上限≒14ヵ月」まで引き下げる)には2兆7,000億元の資金が必要とされる。また、別の試算では6兆3,000億元あまりが必要という結果も出た(「住宅在庫面積×100都市の新築住宅価格」で単純計算、24年5月末時点)。
計算方法や基準の取り方で試算額に幅が出るものの、いずれにせよ政府融資額とはケタが大きく異なる。「資金が全然足りない」のが現実だ。
2.需給のミスマッチ…売れ残り住宅は「地方」にあるが、需要は「大都市」に
次に、保障性住宅の需給ミスマッチ懸念。在庫住宅は地方都市に多いが、そこでは保障性住宅のニーズは比較的小さく、むしろ大都市で必要とされている。
また、「持ち家信仰」が強い中国では賃貸住宅を避ける傾向があり、メンツや周りの目を気にして安価な住宅購入を望まない層も一定程度いるとされ、保障性住宅自体のニーズに不透明な点もある。
デベロッパー側が低い売却価格を敬遠し、適切な価格の設定が難しくなるかもしれない。安易な設定は周辺マンションの値崩れを誘発しかねず、住民の不満が高まる可能性もあるだろう。
3.買い控えムードの高まりで「市民のマインド」も暗雲
最後は市民のマインドだ。中国人民銀行のアンケート調査(24年13月期)によると、不動産価格の見通しで「下落」が22%と「上昇」の11%を上回っている。「下落」が上回るのは4四半期連続。
「価格はまだまだ下がるかも」「買うのはいまじゃない」という買い控えムードの高まりが気になるところだ。
とはいえ、一連の政策は市民の購入ムード改善や市況回復に繋がると思われる。短期的な反発で終わる可能性も否定できないが、不動産指標はいったん下げ止まりそうだ。その流れが継続するかどうかは未知数。本格回復への道のりはまだ長い。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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