(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスをきっかけに崩壊が始まったといわれる「中国不動産バブル」。経済の専門家で株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は、かつて同じようにバブル崩壊を経験した日本といまの中国に「3つの類似点」と「4つの相違点」がみられるといいます。その根拠について、本記事で詳しくみていきましょう。

米国による「ドル散布」が世界経済の発展をもたらした

この米国の対外債務の増加、換言すればドルの散布は世界経済にとって好ましい結果をもたらした。

 

1980~90年代に日本が対米輸出で経済飛躍を遂げ、1990~2000年代には韓国、台湾、香港などのアジアNIESが離陸し、2000年代以降中国経済が高成長を遂げたが、その起点はすべてドルの散布にあったといえる。

 

中国が世界の製造業生産の4割弱、PC、スマートフォンなどハイテク製品や、ソーラパネル、EVなどのクリーンエネルギー分野では8~6割という高シェアを獲得するというオーバープレゼンスはまさしくニクソンショックの賜物であった。このドルの垂れ流しシステムこそが現代のグローバリゼーションの本質といえる。

 

出所:IMF、BIS、武者リサーチ
[図表2]日中経常収支/GDP推移、[図表3]日中家計債務/GDP推移 出所:IMF、BIS、武者リサーチ

 

この対外黒字体質の定着、恒常的貯蓄余剰が日中経済に大きなゆがみをもたらした。本来であれば国内需要の増加により対外不均衡が是正されるべきであるのに、短期間での内需拡大は不可能であった。

 

対米黒字の積み上がりが、日本や中国における通貨の過剰発行をもたらし、その後の不動産バブル形成の原因になったことも銘記されるべきであろう。

 

日中の対外経常黒字(対GDP)と家計債務(対GDP)の推移を見ると、日本、中国ともに、両者の連動性がうかがわれる。

 

ドル散布は米国人の生活水準をも押し上げた

ドル散布は米国国内でも機能した。米国の輸入依存度は1970年代初頭のニクソンショックまでは10%にとどまっていたが2010年以降8~9割に達している。かつて衣料品もTVも自動車も大半を国内で作り自給自足体制であった米国経済が大きく開放化されたのである。

 

これにより太宗の製造業の空洞化か進んだが、それはIT、サービスなど新たな産業と雇用の勃興によりカバーされた。別の観点から見れば、米国製造業の空洞化が米国での産業構造の高度化を推し進めたともいえる。

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年6月24日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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