武富士事件――「あてはめ」で導き出された最高裁の「結論」

今回は、武富士事件を題材に、「あてはめ」で導き出された結論について詳しく見ていきます。※本連載では、青山学院大学法学部教授・木山泰嗣氏の著書『税務判例が読めるようになる―リーガルマインド基礎講座・実践編』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、近年の重要判例をもとに、法的三段論法をふまえた「税務判例の読み方」を解説します。

判決の中に見られる「あてはめ」

あてはめ

最高裁判決の住所の判断枠組みについての判示のあとに、「これを本件についてみるに」という部分があるのですが、ここが「あてはめ」といわれる部分になります。

 

武富士事件上告審判決(最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決・集民236号71頁)

これを本件についてみるに、前記事実関係等によれば、上告人は、本件贈与を受けた当時、本件会社の香港駐在役員及び本件各現地法人の役員として香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していたところ、本件贈与を受けたのは上記赴任の開始から約2年半後のことであり、香港に出国するに当たり住民登録につき香港への転出の届出をするなどした上、通算約3年半にわたる赴任期間である本件期間中、その約3分の2の日数を2年単位(合計4年)で賃借した本件香港居宅に滞在して過ごし、その間に現地において本件会社又は本件各現地法人の業務として関係者との面談等の業務に従事しており、これが贈与税回避の目的で仮装された実体のないものとはうかがわれないのに対して、国内においては、本件期間中の約4分の1の日数を本件杉並居宅に滞在して過ごし、その間に本件会社の業務に従事していたにとどまるというのであるから、本件贈与を受けた時において、本件香港居宅は生活の本拠たる実体を有していたものというべきであり、本件杉並居宅が生活の本拠たる実体を有していたということはできない。(以下、略)

法律によって定められた「課税要件」とは?

このような「あてはめ」について、2頁以上にわたる検討を行ったうえで、最高裁判決は、「以上によれば、上告人は、本件贈与を受けた時において、法1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたということはできないというべきである。」との「結論」を導いています。

 

課税要件」という言葉が、ここにも出てきています。税法という(税法という名の法律があるものではありませんが、税に関する法律全般のことを指しています。「租税法」ということもあります)、「法律」によって課税要件は定められています。

 

憲法84条の租税法律主義というのは、課税要件を法律で定めよう、課税要件を明確に定めよう、ということですね。前者を課税要件法定主義、後者を課税要件明確主義といいます。ここで問題になった課税要件は、「受贈者の住所が国内にあること」ですが、本件では、受贈者の住所は国外にあるということになっていたので、これを満たさないですね。そうである以上、贈与税は課税できません。それにもかかわらず贈与税を課した処分でしたから、この処分は違法である、という結論が出たのです。

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    青山学院大学法学部教授(税法)、弁護士(鳥飼総合法律事務所客員)。横浜生まれ。上智大学法学部法律学科卒。著書に『税務訴訟の法律実務』(弘文堂・第34回日税研究賞「奨励賞」受賞)『小説で読む民事訴訟法』(法学書院)『分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書)『超入門コンパクト租税法』(中央経済社)『情熱を持った専門家になれ!』(大蔵財務協会)などがあり、単著で40冊を超える。「むずかしいことをわかりやすく」、そして「あきらめないこと」がモットー。

    著者紹介

    連載重要事案から学ぶ「税務判例」の読み方

    税務判例が読めるようになる― リーガルマインド基礎講座・実践編

    税務判例が読めるようになる― リーガルマインド基礎講座・実践編

    木山 泰嗣

    大蔵財務協会

    裁判所の判断は、なぜ分かれたのか? 近年の重要判例である、14の事件を素材に、法的三段論法をふまえた「判決の読み方」を講義。苦手な判例の「読み方」が、自然と身につく1冊です。

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