「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】

「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】

「M&A」というと、企業の合併や買収の際に使われるイメージがありますが、実は法人所有の不動産におけるさまざまな問題を解決するひとつの手段として「不動産M&A」が注目を集めています。不動産売買と比較し、手残りに数千万円の差が出るケースも……。そのスキームは一体どのようになっているのでしょうか。本稿では、フジ総合グループ・株式会社フジ総合鑑定の大阪事務所所長、住江悠不動産鑑定士が解説します。

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「不動産M&A」とは?

「不動産M&A」とは、広義において不動産を所有する会社を対象にしたM&Aのことをいいます。本稿では、範囲を絞って、不動産のみを所有する資産管理会社(不動産賃貸業)のM&Aについて解説していきます。

 

一般的なM&Aの目的は、「会社または事業全体の譲渡」としていますが、不動産M&Aは「不動産の譲渡」を目的としています。また、不動産M&Aは一般的な不動産売買とは異なり、「不動産を所有している会社の株式」を譲渡の対象としています。つまり、不動産M&Aは、株式譲渡の形で所有する会社ごと不動産を譲渡するのです。

 

いま、この「不動産M&A」が、不動産売買においてさまざまな問題を解決するひとつの方法として注目されています。不動産のみを所有する会社が不動産を譲渡する場合、会社清算によって不動産を売却する方法と、株式譲渡によって売却する不動産M&Aの2種類があります。

 

では、実際に売却をする場合、どちらを選べばよいのでしょうか。ここからは、不動産売買と不動産M&Aに関わるスキームと税金の仕組みについて解説していきます。

「不動産売買」と「不動産M&A」のスキームの違い

まずは、不動産売買と不動産M&Aのスキームの違いについて解説していきます。

 

不動産のみを所有する会社が「不動産売買」によって不動産を売却する場合、不動産を売却することで会社の資産を現金化し、債務などを弁済したあと、株主に配当金を分配します。これを「会社清算」といいます。一方、「不動産M&A」は、会社が所有するすべての株式を譲渡することで不動産を含む法人ごと移転します。このスキームの違いにより、「不動産売買」と「不動産M&A」では、売買の取引時に発生する課税額に違いが生じ、売り手側の手残り額に大きな差が生まれるのです。

 

では、実際の手残り額には、どれくらいの差が生じるのでしょうか。具体的な数字を例にあげて、みていきましょう。

 

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