「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】

「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】

「M&A」というと、企業の合併や買収の際に使われるイメージがありますが、実は法人所有の不動産におけるさまざまな問題を解決するひとつの手段として「不動産M&A」が注目を集めています。不動産売買と比較し、手残りに数千万円の差が出るケースも……。そのスキームは一体どのようになっているのでしょうか。本稿では、フジ総合グループ・株式会社フジ総合鑑定の大阪事務所所長、住江悠不動産鑑定士が解説します。

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実際の手残り額の差

仮に、以下のような法人化した不動産があるとします。

 

・帳簿上1億円

・時価2億円

・その他の資産/負債等はなし

 

不動産売買にかかる税金

不動産売買の場合、法人化した不動産を売却すると、売却益に対して法人税が課されます。不動産を売却した後は残りの資産を精算し、債務を弁済したあと、プラスの残余財産があれば、その資産を配当金として株主に分配します。配当金を受け取った株主には所得税が課されます。所得税率は、その年の1年間に得た所得の合計にかかる税率をいい、所得が多いほど税率も高くなります。

 

では、「帳簿上1億円、時価2億円(売却益は1億円)」の企業価値で会社を譲渡する場合、手残り額はどうなるでしょうか。

 

まず、不動産の売却価額に対して約35%(約3,500万円)の法人税が課されます。仮にこの不動産を所有している社長がひとりで会社の株式を所有していた場合、売却価額から法人税を差し引いた1億6,500万円が配当金となり、その配当金に対して所得税がかかります。1億6,500万円の所得税には最高税率約55%が課されます。なお、配当金を受け取るのは社長ひとりのため、配当控除が適用されることもあわせて覚えておきましょう。

 

上記のとおり、不動産売買による最終的な手残り額は、売却価額のおよそ半分となります。

 

不動産M&Aにかかる税金

では、不動産M&Aの場合はどうでしょうか。

 

不動産M&Aは法人の株式譲渡になるため、買い手側には不動産の取得に要する不動産取得税や登録免許税の納付義務はありません。一方、売り手側である会社には、株式譲渡益に対する約20%の課税がなされます。

 

たとえば、「帳簿上1億円の不動産を2億円(売却益は1億円)」で譲渡する場合、不動産の時価が2億円でその他資産・負債等がなければ、株式の譲渡価額は2億円となります。もし売り手が2億円の株式を譲渡すると、譲渡所得に対して申告分離課税約20%(約4,000万円)が課されるため、売り手側の負担は4,000万円の配当課税のみとなり、売却による最終的な手残り額は、不動産売買に比べて大きくなります。

 

このように、会社清算による「不動産売買」と株式譲渡による「不動産M&A」では、後者のほうが数千万円の単位で税の負担が少なくなることがわかります。
 

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