50代ひとりっ子「母の死→相続手続き開始」で判明した驚愕事実…〈20年前の父の死〉から放置された大問題「死んだ人にはもう聞けない」

50代ひとりっ子「母の死→相続手続き開始」で判明した驚愕事実…〈20年前の父の死〉から放置された大問題「死んだ人にはもう聞けない」
(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性は、母親が亡くなったことで相続手続きに着手しました。ところがそこで、20年前の父親の死から放置されていた、大変困った事態が判明し…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「手続きしなかった」ことが幸いした点

仮に、遺産分割協議のとおりに相続手続きをしていたなら、登録免許税と司法書士の手数料がかかっていました。しかし、登記をしていなかったため、いまとなっては母親分の相続登記をするすべがありません。したがって、母親の登記は飛ばし、鈴木さんが一度に父親の相続をすることになります。

 

すると、母親のときの司法書士の手数料や手間が省けたことになり、結果的には多少なりとも費用負担が減らせたといえます。

今回必要になる「遺産分割決定書」とは?

では、これからの手続きをどうすればいいのでしょうか?

 

相続人は鈴木さんだけですが、一次相続の手続きができていない場合、〈遺産分割が決定した〉という書類を作成する必要があります。「遺産分割協議書」は相続人2名以上の場合に作成しますが、その代わりとして「遺産分割決定書」を作成します。これによって、数次相続の場合、第1相続から第2相続において、相続人1人で遺産分割を決定することになります。

 

提携先の司法書士から説明を受けた鈴木さんはすぐ、相続登記をすることを決めました。相続手続きは1回とはいえ、父親の戸籍一式と母親の戸籍一式について、生まれたときから亡くなるまでを揃える必要があります。そうした関係書類を揃え、遺産分割決定書を用意し、不動産の名義を父親から鈴木さんに変更します。

誰も住まない実家…相続したら即売却へ

相続登記のめどはつきましたが、課題もあります。鈴木さんは空き家となった実家へ定期的に通って片づけていますが、すでに家族で暮らす自宅がある鈴木さんは、古い実家に戻る予定はありません。もし鈴木さんにお子さんがいたら、お子さんが相続する方法もありますが、鈴木さん夫婦にはお子さんがいません。

 

このような事情もあり、相続登記をするタイミングで売却することになりました。具体的な流れとしては、「測量」→「買主を見つける」→「契約」→「引き渡し」となります。建物は築40年近いですので、買主の希望によって、解体もしくは大々的なリフォームになるでしょう。

 

「まだ家には荷物が残っていますが、迷わず処分を進めていきます」

 

鈴木さんはそのようにいうと、安堵の表情を見せてくれました。

 

今回のケースでは、鈴木さんはひとりっ子でほかに相続人がいなかったため、そこまで複雑にはなりませんでしたが、複数の相続人があり、必要な手続きを長年放置している間に相続人に変化があれば、またそこで問題が複雑化し、面倒なことになります。

 

今回は、費用が抑えられるなどの良い点もありましたが、たまたまであり、やはり相続ごとに必要な手続きを怠らないことが、問題を複雑化させないためにも重要だといえます。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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