10年後に後悔…その理由
FIRE直後の充実感はどこへやら。60歳になったYさんは、自らの選択を猛烈に後悔しています。
まず、早期退職後、温泉へ行く以外、自宅から出る機会がめっぽう減ったこと。働いていたころは会社帰りにいくつか常連となっている居酒屋に飲みに行くのが習慣となっていました。居酒屋にいくと、同じおひとりさまが何人かいて他愛もない話しをするのが、楽しみでもありました。
FIRE後にも何度か居酒屋へ行ってみたのですが、最初のうちはFIREしたという話をみんなもの珍しそうに聞いてくれました。しかし、基本ひとりぼっちなので毎日特段ネタとなるちょっとした日常の事件なども起きず、話題がないのです。話すネタが尽きたころ、以前はなにを話していたのか思い出しました。仕事上での愚痴です。そう気づいてからは、話が嚙み合わない居酒屋へ行くことをやめました。段々とコミュニケーション不足となり、いままでの居酒屋でのつながりもなくなり、世間から取り残されてしまいます。
さらに、外出が減ったことによる弊害は別の側面でも表れるように。運動不足です。家では基本PCの前にかじりつき、ヘルニアが悪化しているのか、動くと痛むので温泉旅行のときくらいしか張り切って歩きません。あるとき、温泉の民宿でひどい動悸があり、従業員に救急車を呼んでもらったところ、腎不全と診断されました。働いていたころは会社から毎年受けるようにいわれていた健康診断もFIREしてからは受けていなかったので、悪化してから治療開始という状態に。ショックだったのは、「温泉を控えるように」と医師からいわれたことです。
ここでYさんの資金計画を見直してみます。50歳のYさんが4,000万円を4%で運用しながら少し生活費を取り崩し、65歳からの年金が月約11万円でも、なんとか生活は成り立ちますが、破格値アパートは老朽化が進み転居し、住居費アップ、生活費は18万円にあがりました。それでも60歳の定年まで働いていたら、年金額は50歳退職より24万円ほど増えるため、月2万円プラスされます。さらに65歳まで働くと、年金は月15万円まで増え、少しずつ資産を取り崩しながら生活すれば老後は安定したものになったのです。
もしくはサイドFIRE(資産運用をメインに副業として仕事し収入を得ること)で、4%ルールで不足する生活費を賄い、社会とつながりを持つことで健康面、精神面を安定させることもできたかもしれません。
また、腎不全と診断されたことで、今後の医療費の負担が懸念されます。おひとりさまで介護をしてくれる人のいないYさんは、介護施設などへ入居する場合、その費用を賄えるでしょうか。
Yさんの場合、定年まで働きながら資産運用したほうがお金と健康の寿命は延びたかもしれません。終身で安泰だったのは、長く働くことだったのでしょうか……。
早期リタイアしても再度働きだす人もいます。早期リタイアするには、リタイア後のライフプラン、社会貢献(つながり)をよく考え進めるべきだったのです。
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表
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