画像:PIXTA

旅するように働き、稼ぐ。リゾート地での仕事を通じて、そんな生活を満喫する人たちがいる。サラリーマンを卒業して精神的に豊かな暮らしを取り戻した人、勤務したリゾート地が気に入って移住してしまった人。リゾート地での仕事を転々としながら日本一周を目指すインフルエンサー。旅するように働く人たちの形は様々だ。この連載では、リゾートバイトを通じて精神的にも金銭面でも豊かな生活を目指す人たちを紹介していく。最終回では、リゾートバイトを通じて自分の適性を見出し、家業のビジネスホテル業を継ぐ決意を固めた23歳の男性を紹介する。

宿泊客から褒められるように

ホテルの接客では、客の質問に迅速に答えなくてはいけません。宿泊客はホテルのホームページを読んできますから、付加価値のある情報を提供しなければ満足してもらえない面もあります。たとえば、宿泊客からは「最寄りの空港からバスはでているか」「ホテルのレストランのコースメニューはなにか」といった多方面からの質問が出ます。接客のプロとして適格かつ迅速に対応するには、ホテルはもちろん、地元のことも詳細に知る必要がありました。


石坂さんが尊敬していたのが、フロント業務の3つ年上の先輩、山中浩さん(仮名)です。電話対応一つを取ってみても、山中さんは1つ1つの質問に対して丁寧、親切、そして的確に回答していました。言葉遣いも、きちんとした敬語や丁寧語を使い、「工場での仕事しかしたことがなく、コミュニケーションが不足していた自分とは雲泥の差があった」(石坂さん)そうです。


「このままじゃダメだ」と思った石坂さんは、言ってはいけない「NGワード」を調べたり、業務時間外に話し方を先輩に聞いたりして懸命に勉強しました。山中さんが笑顔を絶やさずに宿泊客に対応し、信頼されているのを見て、自分も笑顔を増やすようにしました。こうした努力を認めてくれたのか、先輩が飲みに連れて行ってくれるようになりました。先輩は「自信をもって接客しな」といったシンプルな言葉で励ましてくれました。


懸命に努力していると、複数の宿泊客から「話していてしっかりしている」「笑顔で接客してくれて嬉しい」などとほめてもらえるようになりました。石坂さんは「リゾートバイトに従事して多くの人に認めてもらえたことが、ホテル業でやっていける自信になり、家業を継ぐ決意を固めた」と話します。 

 

2年後には実家の家業を継ぐ決意を固める

石坂さんは今年4月から東京・蒲田にあるビジネスホテルで修行中。リゾートホテルとビジネスホテルでは、宿泊客の目的に違いがあります。あえてビジネスホテルを選んだのは、家業と同じ形態のホテルの仕事を経験したかったからです。東京のホテルは多くの宿泊客がおり、たくさん経験を積むことができる面もありました。


石坂さんは2026年度には実家に戻り、「家業のホテルをいずれ継がせてほしい」と正式に両親にお願いするつもりです。リゾートバイトを通じて自信と決意のオーラをまとった石坂さん。23歳とまだ若い彼の活躍が今から楽しみです。

 

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