亡き内縁の妻の口座のお金、出どころは自分の給料なのだが…
50代の男性と同居する女性が、事故によって不慮の死を遂げました。男性と女性はいわゆる内縁関係でしたが、女性は専業主婦として男性を支えており、男性は自分の給料を女性に渡し、生活費の管理を任せていました。
女性は、男性から渡された生活費を自分名義の銀行口座で管理していましたが、長年に渡る同居生活の結果、そこには、生活費の余剰分が数百万円積みあがっていました。
女性が亡くなったことで、男性はこの女性名義の口座から、自分が渡した生活費の残りとなるお金を取り戻したいと考えています。
「内縁の女性は長年専業主婦の立場にあり、自身の収入がない状態だった」
「そのため、この口座のお金は、100%自分が渡した生活費の残りである」
「だから、自分に返してもらいたい」
というのが男性の主張です。
これは「名義預金以前」の問題であり、取り戻すのは困難
このケースでは、原則として、相続時点での預貯金の名義は内縁の妻になっているため、預貯金は内縁の妻の財産だと認定される可能性が非常に高いといえます。また、内縁の妻の財産として認定されると、相続で内縁の妻の法定相続人のものになってしまいます。内縁関係の男性には、相続権がないからです。
対抗措置としては、お金の流れを洗い出し、その財産がもともと男性のお金であったことを証明・主張するしかありませんが、原則論から考えると、それでもお金を取り戻すのは非常に難しいといえます。
専業主婦である妻が夫のお金を自分の名義として積み上げ、相続時に「名義預金」として指摘されるケースがしばしばありますが、税金の徴収という強い権限をもつ税務署との関係によって、「名義預金として処理せざるを得ない」という側面が、どうしてもあり得ます。すなわち、税務署の指摘に対して、裁判等で対抗するのも、労力と費用の点から難しく、税務署の判断に従わざるを得ず、結果として、「名義預金」になってしまうことが多いといえるでしょう。
今回の場合、内縁関係にあった男性と、亡くなった女性の法定相続人との間で、女性名義の銀行口座の預金を巡って争うことになりますが、このように「私人同士」で争う場合、資産が「名義預金」だと認められる可能性は非常に低いと言えるでしょう。一義的には「名義」が重視されますし、実態としても内縁の女性が管理していた以上、「名義預金」だとの主張は非常に難しいものとなるでしょう。
そもそも籍を入れた配偶者であれば、このような問題に発展することはありません。当人同士の判断で内縁関係にあった以上、内縁関係に起因する問題はすべて、当人の責任として片付けられてしまいます。
このような内縁という関係性を選択した以上、一般的な相続制度では守られないため、今回のような事態を避けるためには、お互いに遺言書を作成しておき、自分に何かあった際には相手に財産を相続させられるような対策が必須といえるでしょう。
(※守秘義務の関係上、実際の事例から変更している部分があります。)
山村 暢彦
山村法律事務所 代表弁護士
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