M&A仲介業者からの「ダイレクトメール」にご用心…〈売り手〉が思わず飛びついてしまう「危険すぎる内容」とは?【専門家の助言】

M&A仲介業者からの「ダイレクトメール」にご用心…〈売り手〉が思わず飛びついてしまう「危険すぎる内容」とは?【専門家の助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

M&Aを検討している経営者にとって、「M&A仲介サービス」と「FAサービス」の営業スタイルの違いを理解しておくことは必須です。さらに気をつけたいのが、M&A仲介業者からの「ダイレクトメール」。つい飛びつきたくなるその内容について、オーナーズ株式会社代表取締役社長の作田隆吉氏が詳しく解説します。

起点は売り手のニーズ…「FA業者」を選ぶときの4つのポイント

一方のFAは、顧客の想いをどのようにM&Aで実現できるか考えることが役割です。売り手オーナーを支援する場合、その起点は買いニーズではなく、売り手オーナーのニーズということになります。


売り手オーナーのニーズには、M&Aで事業承継を実現して早くリタイアしたいというニーズもあれば、まだまだ会社を成長させたいが、単独では限界があるので資本提携を検討したいというニーズもあり、さまざまです。こうした売り手のニーズを聞かずして、具体的な買い手を提案・紹介することは、本来の役割に反します。


FAの営業スタイルは、自社の実績やメンバー、FAだからこそ提供できる顧客に対する価値などを訴求するものが一般的です。架電営業をすることも少なく、M&A仲介サービスと比較すると、かなり大人しい印象です。それゆえ、オーナー経営者がFAサービスを希望する場合、能動的にFAサービスを提供してくれる業者を比較・検討することをおすすめします。


なお、FAサービスがオーナー経営者の利益を守り、追求する役割を果たせるかどうかを評価するに際しては、いくつかポイントがあります。以下、FA業者を比較検討するうえで、参考にしてみてください。

 

①FAサービスのほか、M&A仲介サービスも提供している業者でないか

その業者がM&A仲介サービスも提供している場合、仲介サービスを敬遠するオーナー経営者に対し、代替案として片手支援の提案をしているケースが多い印象です。


こうした場合、サービスの実態としてはM&A仲介サービスの範疇で片手を支援しているにすぎず、本来FAに求められる機能を果たせていない可能性があります。


②「FA専業チーム」があるかどうか

会計士や税理士、弁護士であっても、あるいはコンサル業界出身であっても、M&Aにおいて「当事者の利益を守るための経験や知見」を持っているわけではありません。特に、中小企業向けにサービスを提供しているコンサルティングファームは、さまざまなサービスを同一チームで担う傾向があります。


例えば、企業再生もやればデューデリジェンスもやれば、買い手FAも売り手FAも、PMI(統合支援)もやります、といった具合です。こうしたファームにおいては、各サービスの専門性に乏しい傾向にある可能性があります。


理想的なのは、国内系・外資系大手証券会社や、大手会計系ファームなどの専業チームで、FA業務を経験してきたメンバーが中心となって構成されている業者だとよいでしょう。


③「ウェルス・マネジメント」の知見を持ち合わせているか

オーナー経営者を支援する場合、事業の売却という側面はもちろん、事業売却後の資産の形成、子ども世代への資産継承といった、ウェルス・マネジメントの観点も踏まえた支援が必要になります。


当然、関連する税務の知見も求められるところでしょう。売却後に後悔しないためにも、オーナー経営者個人の視点からも的確な助言を提供してくれる業者を選択しましょう。


④買い手探索のネットワークを持っているか

一般的に、FA業者は買い手のネットワークの観点で、仲介サービスに劣ります。その業者が十分な買い手候補企業へアクセスが可能な体制を取っているかについては、慎重な評価が必要です。


特に、1桁億円台以下のM&A取引の場合、自社独自の買い手ネットワークに加えて、全国の金融機関などの他業者と買い手探索で連携できる体制をとっているかどうかもポイントになるでしょう。売り手オーナーにとって大切なのは、依頼する業者の買い手探索ネットワークを使うことで、買い手候補の間で十分な競争環境を作れるかどうかです。
 

 

作田 隆吉
オーナーズ株式会社
代表取締役社長

 

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