FOMCや日銀会合を受けた、投機的円売りの今週の動きは?
これまで見てきたように、最近の米ドル/円は、日米金利差の変化より、投機筋の動向の影響が大きくなっているようです。この背景には、日米10年債利回り差の「米ドル優位・円劣位」が、3%以上と、大幅に拡大している状況では、それが少し縮小したとて、円買いには不利で、円売りに有利なことに変わりないといえます。その結果、日米金利差の米ドル優位・円劣位が縮小しても、円買いの反応は限られ、金利差の「円劣位」が拡大すると、過敏に円売りで反応する状況となっています。
先週は、金曜日の米雇用統計発表が予想より強かったことから、日米金利差の米ドル優位・円劣位の拡大で、米ドル/円は、一時157円まで反発しました。とはいえ、さらに米ドル高・円安が広がるかといえば、そこは、投機的円売りが続くかどうかが、最大の焦点となるでしょう。
今週は、水曜日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして金曜日には、日銀の金融政策決定会合が予定されています。また、下記のように、12日にCPI(消費者物価指数)、13日にはPPI(生産者物価指数)といった、米インフレ指標の発表なども予定されており、注目イベントが相次ぐ見通しとなっています。それらを受けて投機円売りが続くか否かが、米ドル/円の行方を決めることになりそうです。
<12日>
4月CPI総合=前回3.4%、予想3.4%
同コア=前回3.6%、予想3.5%
<13日>
4月PPI総合=前回2.2%
同コア=前回2.4%
CFTC統計の投機筋の円売り越しは、4日時点で13万枚でしたが、その後は米ドルが反発したこともあり、さらに拡大している可能性もあります。そもそも、円売り越しが10万枚以上になると、「行き過ぎ」の懸念が強まるのが通常です。その意味では、すでに高水準となっている、投機筋の米ドル買い・円売りポジションの拡大には、おのずと限度があるといえます。
加えて、すでに見たように、「ペソ・ショック」で、ヘッジファンドなどの投機筋が大きな損失を負ったとしたら、全体的にリスク許容度も低下している可能性があるため、なおさら行き過ぎた米ドル買い・円売りの拡大余地は、限られる可能性があります。
米ドル/円は、160円まで上昇した後、日本の通貨当局による為替介入を受け、急落に転じたあとは、これまでのところ、158円以上の反発はありません。このため、158円は米ドルの上値の重要分岐点と考えられます。
投機筋が、米ドル買い・円売りポジションに大きく傾斜した状況で、さらに「ペソ・ショック」などにより、リスク許容度が低下しているとすると、投機筋による円売りの拡大で、158円を大きく超えるのは難しく、逆にポジション調整が拡大した場合は、米ドル安・円高に戻す可能性もあるでしょう。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は、154.5~158.5円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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