●政策金利は据え置きへ、声明は一部修正の可能性も、織り込み済みで市場への影響は限定的。
●ドットチャートは年内2回の利下げ示唆に修正を予想、ただ来年以降のドットの動きも確認が必要。
●パウエル議長は従来の姿勢を維持、FOMCはバランスのとれた内容となり、市場の動揺はなかろう。
政策金利は据え置きへ、声明は一部修正の可能性も、織り込み済みで市場への影響は限定的
米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月11日、12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今回は、FOMC声明やパウエル議長の記者会見に加え、FOMCメンバーによる最新の経済見通し(SEP、Summary of Economic Projections)が公表され、そのなかでメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」も更新されます。そこで、以下、それぞれについて主な注目点を整理していきます。
まず、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、5.25%~5.50%で7会合連続の据え置きを予想します。FOMC声明にも大きな変更はないとみていますが、前回、第1段落に追記された「この数ヵ月間は2%の物価目標に向けた進展がみられなかった」という文言は、物価の伸びがいくらか落ち着いてきた足元の状況を踏まえ、修正されると思われます。ただ、いずれも織り込み済みで、市場への影響は限定的と考えます。
ドットチャートは年内2回の利下げ示唆に修正を予想、ただ来年以降のドットの動きも確認が必要
次に、ドットチャートについて、前回3月時点では、2024年から2026年まで、年3回の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが適切との見方が示されていました(図表1)。今回、注目は2024年の利下げ回数で、弊社は3回から2回に修正されると予想していますが、2回程度はほぼ想定内と思われ、より長期的な利下げの道筋を考える上では、2025年以降のドットも確認しておく必要があると考えます。
図表2の通り、仮に、2024年の利下げ回数が2回となった一方で、2025年と2026年はともに3回で変わらなければ、3年間の利下げ回数は計8回となり、3月時点(計9回)よりも若干引き締め的な道筋が示されることになります。なお、ドットが多く並ぶ水準(3月時点の2024年末であれば4.625%)は、議長、副議長を含む理事の見通しと推測されるため、ドットが多く並ぶ水準が変化するか否かも、重要なポイントです。
パウエル議長は従来の姿勢を維持、FOMCはバランスのとれた内容となり、市場の動揺はなかろう
ドットチャートでは「Longer run」という、景気を熱しも冷やしもしない「中立金利」を意味する長期のFF金利見通しも示されており、前回3月の中央値は2.5625%でした。今回は、前回2.5%を予想したメンバーが1人、2.625%に予想を引き上げるだけで(他は変更なしと仮定)、中央値は2.625%に上昇します。ただ、これは単に計算上のもので、2.5%水準に多く並ぶドットが一斉に上方シフトしない限り、特にメッセージ性はないと考えます。
最後に、パウエル議長の記者会見について、政策判断はデータ次第という基本姿勢は維持されるとみていますが、前回は「インフレ率が持続的に2%へ低下する道筋を確信するには、まだ時間がかかりそう」と述べていたため、確信の進展の有無が注目されます。今回のFOMCは、インフレを慎重に見極めながら年内の利下げ開始を探るという、総じてバランスのとれた内容になると思われ、市場に動揺を与える恐れは小さいとみています。
(2024年6月7日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米利下げ回数は「2回」に修正されると予想 ~来週の「6月FOMC」の注目点【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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