(写真はイメージです/PIXTA)

1999年以降の日米欧の賃金上昇率について調査したところ、1人あたり実質賃金は米国と英国では高成長を記録したが、日本は若干のマイナス成長となった。ユーロ圏の上昇率はそれらの中間だが、ユーロ圏各国でバラツキも見られ、イタリアやスペインの1人あたり実質賃金上昇率は相対的に低いという。日米欧の実質賃金の推移について、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が解説する。

まとめ

以上、日米欧の主要国の賃金推移を概観してきた。

 

賃金上昇率の中核と言える労働生産性は、今回の分析対象国ではイタリアを除いて一定の上昇している。上述した通り、1人あたりの労働生産性は米国を除いて1%上昇には満たないが、ここのところ一貫して労働時間が減少していることを反映して、時間あたりの労働生産性で見た際には1%程度の上昇はイタリアを除いて概ね達成されている(図表10)

 

 

 

時間あたりの労働生産性が安定的に向上していることは好ましいことではあるものの、1人あたりの実質的な購買力は、労働時間が短くなっただけ抑制されるため、マクロで見た時の経済拡大の影響(例えば、賃金上昇による消費の押し上げ効果)も限定的になる可能性がある。

 

日本やスペインでは交易条件の悪化や労働分配率等の低下も賃金上昇の阻害要因として相対的に大きかった。これらも生産性の向上ほど、マクロで見た経済が拡大しない要因とも言える。

 

そのため、賃金上昇を通じて日本経済の成長につなげるという点では、労働生産性を向上させるほか、労働分配率等要因の低下(雇用者は増加したが労働分配率は雇用者の増加ほど増えなかった)や、交易条件の悪化を抑制することも重要と言える。いずれも構造的な要因が絡むため、容易には改善できない部分もあると思われるが、賃上げ機運が継続し(労働分配率要因の改善に寄与)、企業の価格転嫁が進みやすい経済となり、輸出競争力が維持される(交易条件の改善に寄与)ことで、今後はこれらの要因に改善が見られる可能性もある。引き続き、これらの動向が注目される。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年5月30日に公開したレポートを転載したものです。

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