(※写真はイメージです/PIXTA)

米ドル円相場は、一時34年ぶりに「1米ドル160円」をつけるなど、円安が止まりません。では、この“歴史的な円安”が起きている背景には何が起きているのでしょうか。そして今後、為替はどのような動きをみせるのか、米ドル円の行く末は……。アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略部長 兼 ポートフォリオ戦略室長、荒磯亘氏が解説します。

「米国大統領選挙」が市場に与える影響は…

――物価上昇が是正されれば、円安が落ち着く可能性が出てくるということですね。ただ、さきほどキーワードに上がった「米国大統領選挙」が金融市場へどのような影響をおよぼすのかも気になります。

 

荒磯「金融市場での大統領選挙のセオリーは、“結果を見て動きましょう”です。つまり、選挙前より選挙後のほうが影響は大きいのではないでしょうか。大統領と2つの議会(上院と下院)が同じ政党で揃うかどうかで、政策実行能力に違いが生じるからです。

 

仮にトランプ前大統領が返り咲き、議会が共和党で揃った場合には、自国ファーストによる政策から人件費と輸入物価の両方が上がりやすくなり、インフレリスクの再燃が懸念されます」

 

――バイデン政権下ではずっと円安が続いてきましたが、トランプ前大統領が復帰したシナリオでは、円安か円高か見方が分かれるようです。どのように考えるべきでしょうか?

 

荒磯「前回のトランプ政権時の2016年から2020年のあいだ、米ドルは下落しています。景気と経済を重視した姿勢から、政策のオプションとしてドル高の是正に動くことは今後もありえます。

 

ただし、それは“奥の手”という位置づけでしょう。米ドル円相場は1985年にプラザ合意という転機を迎え、急速に円高が進みました[図表3]。

 

過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 期間:1971年1月~2024年3月。月次ベース。 出所:ブルームバーグ、AB
[図表3]米ドル円為替レートの推移 過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
期間:1971年1月~2024年3月。月次ベース。
出所:ブルームバーグ、AB

 

米国は当時、米ドル高を是正したいと考え、各国とのあいだで人為的に為替介入を取り決めました。現在、米国の景気はてこ入れが必要な状態ではまったくありません。今後、景気が減速しても、まずは利下げで対処できます。

 

それでも不十分だと考えれば、『そもそも米ドルの水準が高すぎる』といった議論に展開する可能性は残されます」

 

――長期的な目線が必要になりそうですね。円安が続くのは、海外旅行や物価の面でも厳しいなと感じてしまいます。

 

荒磯「日本円はフェアバリューからみると安すぎるといわれています。海外投資家が日本株に注目しているのも、また、海外企業が日本企業やその技術と連携を深める動きが目立つのもその証左です。結局のところは、国内への投資が、円安やインフレへのクッションの役割を果たしてくれると思います」

 

――ありがとうございました。今回のポイントとしては、

 

①米国の利下げシナリオは崩れていない

②米国大統領選挙は結果が出てから相場に影響が出てくる可能性がある

③為替は米国側の金利と政治の動きがトレンドを決めていく

 

といった点が挙げられます。円高に戻ると決め打ちをせずに、投資をしながら資産を守る発想が大切だといえそうですね。

 

<<<【AB’s Market Tips】#11 どうなる?!円安。利下げと選挙を控える米国が鍵を握る>>>

 

 

荒磯 亘

アライアンス・バーンスタイン株式会社 執行役員

運用戦略部長(債券担当)/ポートフォリオ戦略室長/シニア・インベストメント・ストラテジスト

 

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【ご注意】
※本稿は、「【AB’s Market Tips】#11 どうなる?!円安。利下げと選挙を控える米国が鍵を握る」を参考に、再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタインポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2024年5月9日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。

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