何もしなければ利回りは4%程度まで下落する!?
ここまで厳しい話ばかり続けてきましたが、これらは決してオーバーに語っているわけではありません。オーナーがもっとも気にする利回りも、このまま何もしなければ、普通の賃貸マンションの場合、4%程度まで下落すると筆者は考えています。
これまで、土地を所有しているオーナーが建築費を投下してマンションを建てた場合、物件にもよりますが、10%程度の利回りは見込めました。しかし、この先、賃貸市場が厳しくなっていくにつれ、7%でもまずまず、4%でも仕方ないか、という感じで、利回りの低下が許容されていくように思うのです。
なぜ、利回りが低下していかざるを得ないのか? それは、土地や建物の工事費が下がらないのに、借り手が少なくなるため賃貸経営で得られる収入が減るからです。非常にシンプルな話です。もし、投資に見合ったリターンがなければマンション経営の意味がないと考えるなら、前述したように、従来の賃貸マーケットの土俵から抜け出す必要があります。
2050年は空室率40%というレポートも
では、40年後のマンション経営は一体どうなるのか、ここで少し、簡単なシミュレーションをしてみましょう。人口が9000万人にまで減少した40年後は、今より確実に家賃が下落し、空室が増えているはずです。
たとえば、総戸数50戸のマンションがあるとします。家賃が1割下がると、家賃収入は当初想定の9割になります。そのうちの空室が2割になると、家賃収入は当初想定の72%にまで下がります。72%というと、50戸中、14戸が空室になったのと同じことです。このレベルの下落は普通に起きてくるでしょう。
さらにいえば、この数字は国内の賃貸住宅の総戸数が現在と変わらず、人口だけが減ったときの予測です。現実には、「過去の実績」を信じる人たちが、これからも新しい賃貸物件を建て続けるでしょうから、3割減どころの騒ぎではなくなるはずです。
すでに、日本全国で現状13%の空室率は上昇する傾向にあります。大家さんたちの間には、「あれ、このごろ埋まらなくなってきたな」「礼金が取れなくなってきたな」という緊張感が少しずつ走り始めています。更新料が無効になった裁判の話も記憶に新しいところです。入居者たちも賃貸市場の変化を微妙に感じとっており、昔は滅多になかった家賃の値引き交渉をする人たちが増えています。
それでも、入居率はまだ全国平均で約87%(※HOME’s不動産投資「見える!賃貸経営」サイト2011年1月13日付データ参照)あるため、本当の意味での危機感を感じるまでにはいたっていません。サブリース会社に管理をまかせているオーナーの中には自分のマンションの入居率を知らない人もいるでしょうが、問題は、入居率が70%、60%になってきたとき、マンションオーナーとしてどう対応していくかということです。
賃貸経営は、入居者さえいてくれれば安定的に毎月お金が入ってくるという、手間のかからない非常に効率のいいビジネスです。そのメリットを考えると、利回りが4%に下がったとしても、銀行の預け入れ金利などと比較して「それでも十分」と考える層もきっと出てくるでしょう。しかし、銀行の融資を使っている場合は大変です。4%から利息や経費を支払ったあとで残る利益はどれほどのものでしょうか?
ちなみに、野村総研は、2050年の空室率を40%と予測するレポートを出しています。40%も空室になれば、手取り(キャッシュフロー)が減るだけではなく、融資の返済が滞る人も出てくるでしょう。
自分の物件が競売にかかるリスクが現実的に
そうなったら売ればいい、と思うかもしれません。しかし、マンション経営は通常、銀行からお金を借り入れて大きな投資をしています。銀行への残債が残っている場合は、簡単に手放すことはできません。
最終的にどうしようもなくなれば、物件は競売にかかることになります。今現在、ほとんどの大家さんたちは、自分の物件が競売にかかるなんて想像もしていないことでしょう。しかし、今の感覚で、さらに特徴のないマンションで賃貸経営を続ければ、誰もがそのようなリスクに飲み込まれる可能性もあり得るのです。
投資に見合ったリターンを求めるなら、従来の土俵の常識に流されない強い「何か」が不可欠です。そのためにも、新しい考え方でマンション経営を行う必要があります。