元共稼ぎ夫婦、会員制ホテルを楽しむ老後が突如暗転…
K美さんは現在68歳。社会に出た当時は、男女雇用機会均等法すらなかったなか、なんとか遠縁の叔父が経営していた出版関連の会社に、いわゆるコネ入社で滑り込み、定年の65歳まで勤め上げました。
同い年の夫は大学時代のサークル仲間、卒業後は大手メーカーの研究職として、同じく65歳で完全リタイアをしました。
長年共働きをしていた2人ですが、実は定年後に実現したいプランがありました。それはリゾート会員権を購入して、全国の温泉地に点在する会員制ホテルを制覇することです。定年前からいろいろと資料を取り寄せて吟味をし、どうせなら、と奮発して一番高いグレードを購入しセカンドライフの始まりを満喫していました。
夫の死
ある日のことです。
自宅でくつろいでいるときに、胸が痛いと夫が訴えたのです。すぐさまタクシーを呼び、かかりつけ医のいる病院に向かうも、あろうことか車中で夫は帰らぬ人となってしまいました。救急車を呼ぼうと強く進言していたら助かっていたかもしれない……とK美さんは自分自身を責めずにはいられませんでした。
コロナ禍の急逝でもあったため、葬儀は身内の近親者で執り行い、死亡後の手続きは一人娘(37歳)が滞りなく済ませてくれていました。いまだ一人で過ごす日常に慣れないなか、日本年金機構からの通知がポストに。開封してみると、遺族厚生年金の決定通知書に「年金額20万円」と記載があります。
「年金額20万円って月1万6,000円? 一体、どういうこと?」というのも、数ヵ月前に参加した同窓会での会話を覚えていたからです。昨年、夫に先立たれたという友人のR子さんが「遺族年金は配偶者の4分の3もらえるし、しかも非課税だから助かっているわ」たしかにそう話していました。急に不安にかられたK美さんでした。