お金もないが、時間もない…サラリーマンの実態
ならば、と副業・兼業が推進されているわけだが、そもそも日本のサラリーマンは「時間がない」のも実情だ。働いた分、稼ぎが増えるならばいいが、大手でなければいまだにサービス残業のような風習は根強い。文京区に勤務する30代の安西さん(仮名)はこう語る。
「給与にみなし残業が含まれているので、残業代をもらったことはありません。タイムカードも手書きで上長がチェックする雑なものなので、なんとか時間内におさまるように適当に記入するのに、また頭を使って時間をかける……という本末転倒な状況になっています」
労働基準監督署に訴えるという方法は取れないのだろうか。
「労基に訴えて、我々の労働環境が是正されたところで、今度は会社がうまく回らなくなるのは目に見えています。それでは自らの首をしめるようなものです。転職をしたいと考えていたこともありましたが、コロナ禍でいつの間にか人材市場は買い手市場になってしまいました。生活は苦しいですが、動くことで今よりよくなる見込みがありません」
政府は「副業・兼業」も推進しているが。
「仕事もプライベートも、今あることをただただ懸命にこなすことで、なんとか生活できているという状況です。副業をする時間など捻出できません。片手間にやって成功するものでもないでしょうし、そもそもうちの会社が副業を認めているかどうかもわかりません。
もし少しの稼ぎがそれでできたとしても、今度は確定申告をやらなければならなくなるでしょう。会社から提出を要請される年末調整の書類でさえ記入するのに精一杯なんです。よほど大きく儲かる見込みがなければ、費用対効果も合わないと思います。疲労が蓄積し、仕事にも影響が出て、会社にも迷惑がかかります」
会社での労働で忙しく、副業などする時間はないという安西さん(仮名)。政府は「働き方改革」も進めているがその実感はない。
厚生労働省のホームページには、「働き方改革の目指すもの」として、次のように書かれている。