夫婦間で「受給額」に差が出てしまうという問題点
なぜなら、毎月の配偶者の収入(=婚姻期間中に夫婦が協力し合って築いた財産)から捻出して厚生年金保険料を支払ってきたにもかかわらず、離婚により夫婦の一方が受け取れる老齢厚生年金の額が少ない、あるいは夫婦の一方が老齢厚生年金をもらえない、という事態が生じるからです。
そこで、夫婦の一方が厚生年金を支払っている第2号保険者である場合に限り、婚姻期間中に支払った厚生年金保険料を夫婦で平等に分割し、これを元に将来受け取れる年金額を算出して、夫婦のあいだで受給額に差が出ないようにする制度が年金分割です。
年金分割の対象が「厚生年金」のみである理由
なぜ国民年金は対象にならない?
年金分割の対象は厚生年金のみです。
つまり、国民年金しか払っていない自営業者の配偶者は、離婚時に相手の年金を分割してもらうことができません。
国民年金には厚生年金のように扶養という制度がないため、自営業者の妻や夫も自分で国民年金保険料を支払います。将来受け取る年金も自分で支払った保険料に応じた額となるため、そもそも将来受給できる年金額に夫婦間で差が生じることがありません。
そのため、夫婦のいずれも厚生年金に加入したことがない(=会社員や公務員になったことがない)場合は、離婚をしても年金分割はできないのです。
「合意分割」と「3号分割」
年金分割の割合を決める方法は、次の2つにわけられます。
「合意分割」とは?
夫婦が話し合って保険料の分割割合を決めるか、裁判所で分割割合を決定してもらう方法で、上限は1/2と定められています。
たとえば、夫が第2号被保険者、妻が第3号被保険者の場合は、夫が婚姻期間中に支払った厚生年金の保険料を夫婦で分割することができます。このとき、妻が支払ったことにできる保険料の割合は最大1/2となるため、夫が3割、妻が7割といったわけ方はできません。
「3号分割」とは?
夫婦の一方が第3号被保険者である場合に適用される年金分割の制度です。
配偶者が第2号被保険者で婚姻期間中に厚生年金を支払っていた期間があれば、その期間に相当する厚生年金保険料に関しては、相手の合意なく自動的に1/2が第3号被保険者の支払った保険料とみなされます。ただし、3号分割を適用できるのは2008年4月1日以降の婚姻期間に相当する部分のみです。
2008年3月31日以前の婚姻期間に厚生年金保険料の支払いがある場合、その期間に相当する保険料は合意分割でわけなければなりません。
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