“将来の退職金”も財産分与の「対象内」…離婚後の請求はできる? 手に入れるポイントは【弁護士が解説】

“将来の退職金”も財産分与の「対象内」…離婚後の請求はできる? 手に入れるポイントは【弁護士が解説】

離婚時の財産分与において、対象の財産のなかに含めることを忘れがちなのが、「将来の退職金」です。離婚時にはまだ支給されていないため、ついつい気付くことができず、そのまま離婚条件を確定してしまうケースもあります。本記事では、Authense法律事務所の弁護士白谷英恵氏が、将来の退職金の財産分与について解説します。

将来の退職金を財産分与で受け取るには

それでは、まだもらっていない退職金を、確実に離婚の財産分与で受け取るには、どうすればよいのでしょうか。

 

離婚時に公正証書を作成する

財産分与の内容は、当事者の話し合いで決定することができます。どのような財産をどの割合で分割するかを、互いに交渉して決めるわけです。

 

ただ、口約束や普通の書面の作成では、あとから、そのような内容に合意していない、自分が署名したわけではないなど、財産分与の内容について紛争が起こる可能性が出てきます。

 

そのため、信頼性の高い文書にて、財産分与の内容を記す必要があります。それが、公証役場にて作成される公正証書なのです。

 

なお、公正証書の内容には、強制執行認諾の文言を含めることを、加えておすすめします。というのも、将来に支給される退職金を、相手が素直に渡してくれないなどの状況に陥った場合に便利です。

 

裁判所には強制執行という制度があります。裁判所が代わりにお金を差し押さえ、そこから強制的に支払いを受けることのできる制度です。この強制執行を事前に承諾することを公正証書の内容に入れておけば、退職金を渡してくれない場合にスムーズに手続きが行われます。

 

【要注意事項アリ】あとから将来の退職金が、財産分与の対象だと気付いた場合は?

現時点では退職金が支給されていないので、財産分与の対象ではないと思っていた方もいるのではないでしょうか。

 

しかし、まだもらっていない将来の退職金が確実に支給されるとわかり、財産分与の対象になると気付いたような場合、あとから財産分与の請求はできるのでしょうか。

 

まず、財産分与を請求するには期限があります。離婚成立後2年以内であれば、離婚後でも請求が可能となっており(民法768条2項参照)、逆にそれを過ぎれば請求はできません。そのため、まずはこの期間内であるかどうかの確認が必要です。

 

さらに、将来の退職金については追加で注意すべき事項があります。それが、清算条項です。清算条項とは、離婚において取り決めした権利・義務以外に、なんら債権債務もないと当事者双方で確認したものです。

 

せっかく離婚条件を決めたにもかかわらず、あとから蒸し返されることを、当事者としてはなんとしても防ぎたいものです。

 

そのため、一般的に、あとから追加で請求されないように、公正証書などの文言に、清算条項を入れるのです。具体的には「今後一切金銭を求めない」などの文言で、清算条項を表します。

 

この清算条項は、基本的に財産分与請求にもおよびます。つまり、離婚の際に清算条項が記載された離婚条件の書面に合意した場合には、基本的に新たな財産分与請求は認められないと解されます。

 

ですから、追加で財産分与を請求する場合は、清算条項がないか確認をしなければいけません。定年退職間際で、退職金の支給時期だと予測して財産分与を請求しても、清算条項により、新たな財産分与が認められない可能性があるので、注意が必要です。

 

将来の退職金を財産分与で受け取るためのポイント

確実なのは、離婚条件のなかに、将来の退職金を含めるということです。支給金額が確定していない現時点では、「将来に退職金が支払われた場合は、その時点で支給金額を決める」など、話し合う機会を持つことを入れるのもいいでしょう。

 

ただ、離婚後の財産分与の話し合いは、離婚前に比較すると難航します。すでに離婚がなされているので、相手方が譲歩する可能性は低く、合意に達することが難しいという見方もあります。

 

そのため、財産分与については離婚前に交渉することが望ましいといえます。まだもらっていない将来の退職金についても、離婚条件のなかにしっかりと入れておくことをお勧めします。

「将来の退職金」も財産分与の対象! まずは弁護士へ相談を

退職金は、老後の生活において重要な資金であり、これまでの労働に対する対価の集大成といえます。

 

離婚をしても、相手に対する今までの自分の貢献が消えるわけではありません。支払いの蓋然性が高ければ、将来の退職金も財産分与の対象となりますので、臆することなく財産分与を請求しましょう。

 

実際の退職金の計算方法など、法律的な専門知識も必要となります。事前に弁護士などの専門家へのご相談をおすすめします。

 

 

白谷 英恵

Authense法律事務所

 

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