“将来の退職金”も財産分与の「対象内」…離婚後の請求はできる? 手に入れるポイントは【弁護士が解説】

“将来の退職金”も財産分与の「対象内」…離婚後の請求はできる? 手に入れるポイントは【弁護士が解説】

離婚時の財産分与において、対象の財産のなかに含めることを忘れがちなのが、「将来の退職金」です。離婚時にはまだ支給されていないため、ついつい気付くことができず、そのまま離婚条件を確定してしまうケースもあります。本記事では、Authense法律事務所の弁護士白谷英恵氏が、将来の退職金の財産分与について解説します。

退職金を受け取る「蓋然性が高い場合」とは?

それでは、将来支払われる退職金のなかでも、退職金を受け取る蓋然性が高い場合とは、どれくらいの時期を指すのでしょうか。

 

蓋然性が高いと判断されるのは10年が境目?

Aさんの場合、定年退職まで残すところあと5年での離婚となりました。このような場合、退職金を受け取る蓋然性が高いといえるのでしょうか。

 

多くの判例は、それぞれの個別事情にもよりますが、5年であれば、将来の退職金を受け取る蓋然性が高いとして、財産分与の対象になることを認めています。

 

Bさんの場合、離婚が確定した時点では、定年退職まであと15年ある状態です。このような場合も結論は同じとなるのでしょうか。

 

名古屋高裁の平成21年5月28日の判決では、勤務先が私企業において、定年退職まで15年ある状況では、退職金の受給の確実性は必ずしも明確ではないこと、また価額の算出もかなり困難であることを理由に、財産分与の対象とならないと判断しています。

 

画一的な基準がないため難しい判断になりますが、おおむね10年を超えれば、退職金を受け取る蓋然性が高いとはいえず、財産分与の対象にはならないようです。

 

なお、東京地裁の平成17年4月27日の判決では、勤務先が学校法人において、定年退職まで9年ある状況で、蓋然性が高いとして、財産分与の対象になると判断しています。

 

将来の退職金から、分与される金額を算出する方法

それでは、将来支払われる予定の退職金について、具体的にどのように算定するのでしょうか。将来の退職金から、分与される金額を算出する方法は大きくわけて2つあります。

 

・現時点での退職金をベースにする
・将来に支払われる満額の退職金をベースにする

 

ただ、将来に支払われる満額の退職金をベースにする場合は、中間利息の控除に注意しなければなりません。

 

満額の退職金は、定年時に受け取ることが前提で算出されていますが、実際受け取るのは現在なので、時差が生じます。つまり、その期間分の利息を早めに受け取る分、差し引かなければなりません。

 

なお、前提として、退職金の支給要件を確認する必要があります。雇用契約の際の労働契約書や就業規則などに記載されている内容を確認しましょう。

 

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