狙いはトラベル客の「ショッピングサイトへの誘導」
海外のホテル予約サイトの参入は、日本のオンライン旅行大手の楽天トラベルに大きな刺激を与えていている。
同社は2010年、旅行業界においてJTBに次ぐ国内旅行市場取扱額2位にまで成長したが、これからは訪日外国客をいかに取り込むかで、海外のコンペティターとしのぎを削ることになる。
2014年7月、楽天トラベルは多言語化サイトの大幅なリニューアルを行い、10ドメイン、7言語(英語、フランス語、中国繁体字、中国簡体字、タイ語、韓国語、インドネシア語)のサイトとなった。その後、予約件数は前年度比60〜70%増の勢いだ。利用国籍は、米国、香港、台湾などが多い。
楽天トラベルによると「利用者は基本的にFITだから、日本に興味があってリピーターの多い国や地域が多くなる」という。同グループでは海外拠点づくりを進めていて、特に台湾には楽天のECサイトがあり、台湾楽天カードも発行している。
「弊社の場合、トラベル単体ではなく、グループのシナジーを活かしてプロモーションしていくというのが基本の考え方」だと説明する。
確かに、旅行もショッピングも同じプラットフォームで商取引される以上、日本が好きで旅行に行きたい人たちと、日本の商品をショッピングしたい人たちを分けて考える必要はないというわけだ。
「海外サイトにはない」宿泊プランも強み
では、楽天トラベルの外国客の利用状況はどうなのだろうか。同社によると「楽天トラベルが全国を約300のエリアに分けているなか、すでに95%のエリアで外国客の予約が入っている」という。
実際に多いのはゴールデンルートとなる東京→富士山→関西エリアと沖縄県、北海道だが、楽天トラベルを利用する外国客はリピーターとして日本に複数回来ている層が多い。そのため、九州や中部、北陸、中国四国などの予約が増えており、全国への分散化が見られるそうだ。
とはいえ、海外サイトの存在感が増すなか、国内オンライン旅行会社(OTA)の雄である楽天トラベルは、どう立ち向かおうとしているのか。海外サイトに負けないサービスは何か。
「現在、外国客の受け入れに同意いただいた1万8000施設が外国語ページを持っている。海外サイトに比べ、地方の施設が多い。国内客と同様に外客向けにも、宿泊プランを提案しているのも、他のサイトにはない特徴だ」。
さらなる楽天トラベルの強みは、全国津々浦々までカバーしている宿泊施設とその軒数、そして海外サイトにはない宿泊プランだ。宿泊プランは、さまざまなベネフィットをオプションとして付け加えることで宿泊施設の客室単価や価値を上げるためのサービスである。
こうした日本流のサービスをベースに訪日客の取り込みを図る楽天トラベルのやり方は、エクスペディアなどの海外サイトとはさまざまな点で違うところがあり、これがかえって興味深いといえる。
現段階で、どちらが支持されるのかはわからない。訪日客は多様化しており、それに応じたサービスの領域が拡大していくことに意味があるといえるだろう。