今回は、エクスペディアなどの予約サイトを利用する宿泊客の増加を受けて、各ホテルがどのような戦略を考えているのかを見ていきます。※本連載は、インバウンド評論家、フリーエディターとして活躍する中村正人氏の著書、『ホテル業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、活性化するホテル業界の最新事情を紹介します。

無名の宿でも、見せ方次第で強力な集客が可能に

これまでの連載で紹介した多種多様な宿泊施設と外国客を直接結びつけているのが、ホテル予約サイトである。訪日外国客の増加にともない、海外からのサイト経由の予約が増えているからだ。これは高級ホテルからゲストハウスの経営者に至るまで共通している。

 

日本の事情をよく知らない外国客にとって自ら希望する価格帯やエリア、タイプなどから最もふさわしい宿を選んでくれる仕組みを使わない手はないのだ。

 

いまや予約サイトは日本のホテル市場を大きく変えつつある。どんなに無名の宿泊施設でも、予約サイトのプラットフォームの上では、見せ方次第で外国客の目に留まる可能性があるからだ。

 

ある東新宿のビジネスホテル関係者は「昔は地方の出張客がメインだったが、いまでは閑散期は外国客のほうが多くなる。海外からの予約はエクスペディアなどを使ったネット予約が大半だ」と語る。

 

 

2006年11月に日本法人を設立したエクスペディアの存在感は急速に増している。海外31カ国に販売拠点があり、もともと日本国内の海外旅行マーケットを取り込むため参入した同社だが、最近では訪日外国人市場が伸びているという。

 

「訪日市場のトップは米国だが、この3年、アジアは伸び率が高い。背景には12、13年に一気にアジア市場に販売拠点を開設したことがある。現在、アジア11カ国・地域に拠点がある。なかでも韓国、シンガポール、タイ、台湾、香港の市場が伸びている。また韓国、香港、台湾、タイのエクスペディアでは訪日市場の売上が最大となっている」と木村奈津子マーケティングディレクターは説明する。

連泊の増加で、需要の少ない日でも空室が減少

国内ホテルの仕入れを担当するレラン・ラビアソシエイトマーケットマネジャーも「数年前まで訪日市場の割合は少なく、せいぜい東京、大阪のゴールデンルート周辺だった。ところが、最近急速に北海道や沖縄、福岡、箱根などに足を延ばす海外客が増えている。そのため、弊社の仕入部隊も全国を飛び回り、契約施設を拡充している。どんな施設でもいいのではなく、なるべく外国客が泊まりたくなるような宿と契約しようと考えている」という。

 

では、外国客が泊まりたくなるのはどんな宿なのか。

 

「外国客といって一括りにはできない。国によって全然違う。同じ欧米でも、なじみのあるヒルトン、ハイアットに泊まりたい人もいれば、日本でしか体験できないカプセルホテルや旅館に泊まりたいという人もいる。アジア客は一般にリーズナブルな価格帯のホテルのニーズが大きいので、ビジネスホテルとの契約を増やしている」(ラビマネージャー)。

 

ホテル側にとっても、外国客を受け入れるメリットはある。外国客は一般に予約から宿泊までのリードタイムが長く、数か月前から予約を入れるケースが多い。国内客と違って連泊が多い。平日利用も多いので、平日の需要の弱い曜日も埋められるのだ。海外ホテル予約サイトが全国各地に外国客を送客する時代はもう始まっている。

 

<外国客が利用する主なホテル予約サイト>


Expedia
http://www.expedia.co.jp/


Agoda
http://www.agoda.com/ja-jp


Booking.com
http://www.booking.com/index.ja.html


Hotelbeds
http://www.hotelbeds.com


HRS
https://hotelservice.hrs.com/portal/


Ctrip
http://jp.ctrip.com/


楽天トラベル
http://travel.rakuten.co.jp/

ホテル業界大研究

ホテル業界大研究

中村 正人

産学社

訪日外国人旅行者の急増、外資系ホテルの日本進出…新業態ホテルも続々登場し、活性化を加速するホテル業界。 数々の話題やトレンド、ビジネスの最新動向など業界のことがもっともよくわかる書籍となっています!

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