(画像はイメージです/PIXTA)

自分が築いた会社を、わが子に継いでほしい…。そのように考えるオーナー社長は少なくありません。しかし、子どもを次の社長にするためには、注意を払わなければならない、さまざまな問題があるのです。本連載は、事業承継士・中小企業診断士の中谷健太氏の著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「社長は息子+金庫番は母親」の組み合わせで起こる問題

事業承継における親族間のトラブルは、きょうだい間だけで発生するものではありません。後継者と先代の妻、つまり母親とうまくいかないケースもあります。ただきょうだいと違って、経営権(社長の椅子)を狙って後継者と母親が対立するケースは多くはありません。むしろ後継者を支えて自社を守ろうとします。しかし、会社の守り方がときに後継者にとって疎ましくなるのです。

 

オーナー企業では、社長の妻が会社の経理を担当していることは珍しくありません。会社の「経営者の妻で経理担当」という立場は絶大な力をもちます。ときには社長に第三者的なアドバイスをしたり、母親的な存在として社員たちの面倒を見ていたり、厳しいお目付け役の経理担当者として「シビアにコストを管理する役割」を担う、なくてはならない存在であったりします。

 

不正の起きやすい経理という仕事を妻に任せる安心感は、他に代えがたいものでしょう。しかしながら弊害もあります。会社のカネを管理しすぎてしまうことです。

 

ある会社では、先代が亡くなり長男が社長になりました。先代の妻は役員として残り、会社の印鑑と通帳をすべて自分で保管し後継者に渡しませんでした。後継者が新しいことを始めようとしても、いつも母親の了承が必要です。ところが母親は、新しいことには極端に消極的でした。これではいったい誰が社長なのかわかりません。

 

社長は、カネとヒトを自分の判断で動かすことができるからこそ社長です。そのカネを自由に動かせないとなれば社長とは言えません。

 

長年にわたって、先代の妻(母親)など同じ人が経理を担当していると、いつのまにか「カネの管理がその人しかできない」という事態に陥ります。結果として会社のカネの動きを実質的に掌握することになります。

 

また先代の妻(母親)は、経営者同様に高齢化していきます。母親自身は「早く自分の業務を誰かに引き継ぎたい」と口ではこぼしつつも、実際にその仕事を他の誰かに任せることになれば、自分の仕事がなくなり、自分の存在価値を失いかねないという不安があります。そうしたことから、後継の経理担当者を育てようとしないケースも目立ちます。

 

代替わりこそ経理担当者変更のチャンスです。現社長が自分の妻を会社の経理担当者にしているなら、社長交代を契機に別の者に変更します。

 

ただ急に頭ごなしに変更を指示すると、妻としても自分を否定されたようで気分を害するでしょうから、「自分はそろそろ引退を考えている。これを機会に経理担当者も新しい人に任せよう」と話を広げていくのが穏当です。

 

社長交代のタイミングに合わせて、次の経理担当者の選定と教育を施していくことを考えましょう。

 

 

中谷 健太
株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/経営革新等認定支援機関

 

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※本連載は、中谷健太氏による著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

中谷 健太

あさ出版

「子への承継」に軸足を置いた、中小企業の事業承継のための実務書。どの経営者にとっても、最大のミッションの一つである事業承継。 「できるなら子に継いでほしいが、承継意欲のない子をどうすればいいか」 「実績も見通…

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