(※写真はイメージです/PIXTA)

夫を亡くした妻の生活を支える「遺族年金」。しかし、長年働いてきた「共働きの妻」と家庭を守ってきた「専業主婦の妻」の場合には、納得できかねる差があるのをご存じだろうか。実情を見ていく。

パートナーと死別・おひとり様になるリスク、女性のほうが3倍高い

あらゆる世代が関心を寄せる「自分の年金の受取額」の問題。

 

「あまりに少なすぎる」

「こんな金額では生活が成り立たない」

 

といった声がしばしば聞かれるものの、この制度プラス自身の預貯金等で、現在の高齢者たちの多くは生活が成り立っている、という現実もある。

 

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて老齢年金が14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は男性が16万7,388円、女性が10万9,165円となっている。

 

一方で、厚生労働省『令和4年 人口動態統計』によると、1年間に亡くなった人は156.6万人。そのうち男性は79.7万人で、結婚していた人は47.0万人。つまり1年間で「夫に先立たれた妻」が47万人になるということだ。

 

なお、亡くなった女性は76.8万人で、そのうち結婚していた人は16.4万人という統計から、パートナーと死に別れて「おひとり様」になるリスクは、女性の方が3倍高いことになる。

遺族年金「亡くなった夫の年金額の4分の3」といわれるが…

では、夫に先立たれた場合、妻の年金はどうなるのだろうか? よく耳にするのが、「亡くなった夫がもらっていた年金の4分の3を、遺族年金としてもらえる」という説明だ。

 

例として、80代の夫を亡くした70代の専業主婦の妻の遺族年金額を考えてみよう。

 

元サラリーマンの80代の夫は、平均的な年金額を受給し、かつ、国民年金を満額受給していたとする。

 

日本年金機構の説明によると、遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、「亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給される」とある。 亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができるという。

 

まず「遺族基礎年金」だが、例に挙げた70代妻の場合、もらえない可能性が高い。遺族基礎年金がもらえるのは、「子」または「子をもつ配偶者」であり、ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までにある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子だ。70代では、該当する子がいるとは考えにくいだろう。

 

そして「遺族厚生年金」だが、これを受けられる遺族は、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母であり、優先順位もこの順番となっている。よって、80代で厚生年金を受け取っていた夫を亡くした女性は遺族厚生年金がもらえることがわかる。遺族厚生年金は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を受け取れる。

 

これらの点を総合すると、「平均的な年金額の元サラリーマン夫」が亡くなった場合、国民年金=満額受給だとした場合、厚生年金部分は10万円ほど。その4分の3、およそ月7万5,000円が遺族年金としてもらえるということになる。

 

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