景気について語る人は「4グループ」に分類できる
景気について語る人は大勢いますが、筆者はそうした人を4つのグループに分けています。「経済学理論優先の経済学者」「株価を予想するために景気の話をする株価予想屋」「景気の予想屋」「常に大恐慌を予言し続けるトンデモ屋」です。
★「経済学者」…経済学理論優先
経済学者は、経済学理論には詳しいのですが、経済学理論で景気を説明することは、現段階では無理があります。「景気は気から」といわれるように、心理の影響も大きいので、心理学との共同研究が進むまで、むずかしいでしょうね。
そこで筆者は景気を語る経済学者のことを「理路整然と間違える人々」と呼んでいます。彼らからすれば筆者は「経済学理論もわからずに景気を語っている勘ピューター」ということなのでしょうが。
★「株価予想屋」…株価を予想するために景気の話をする
株価の予想屋は、限られたものを詳しく見ます。具体的には日米の金融政策と米国の雇用統計です。米国の鉱工業生産は、あまり見ません。それは、米国の生産統計が発表された日に株価が動かないからです。生産統計の発表で株価が動かないならば、投資家は生産統計に興味を持ちません。したがって、株価の予想屋も生産統計について語らない、というわけです。
★「景気の予想屋」…数多くの経済指標を広く浅く見る(筆者はここ)
景気の予想屋は、数多くの経済指標を広く浅く見ます。景気の大きな流れをさまざまな要因の綱引きであると考えているからです。米国の鉱工業生産等も、もちろん見ます。
景気予想屋は、株価予想屋と反対で、金融政策についてはあまり関心を持っていません。「金利が0.25%下がったから設備投資をしよう」という企業は多くないからです。せいぜい「金融緩和で株高やドル高になると景気にはプラスかな」といった程度でしょう。
★「トンデモ屋」常に大恐慌を予言し続ける
トンデモ屋はある意味で優れたビジネスモデルです。筆者の自尊心がもう少し少なかったら試みてみたいのですが(笑)。
トンデモ話を聞きたい人は一定数います。最悪の可能性について考えてみたい、という人も一定数います。したがって、固定客が容易に確保できるわけです。
しかも、面白いストーリーを多数思いつけます。楽観論は「大したことは起こりません」で終わりですが、悲観論は多様な懸念を膨らませることができるからです。「幸せな家庭は一様に幸せであるが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」という言葉がトルストイの小説にありましたが、それと似ていますね。
そして、予想が外れてもだれにも怒られません。時々リーマン・ショックのようなことが起きますから、その時には「何年も前から私が正しく予想していたとおり…」といえばいいのです。
景気予想屋と株価予想屋について、ちょっと補足
景気予想屋は「経済指標は数多くあり、それぞれが振れるのだから、一喜一憂しないように」と教えられて育ちます。多くの経済指標を数カ月分眺めて、景気の大きな流れが変化しつつあるのかを見極めるのです。
株価の予想屋は、そんなことをしている間に株価が動いてしまいますから、他人より素早く一喜一憂する必要があります。
そこで筆者は株価予想屋を「雨が降り始めると洪水を心配し、雨が止むと水不足を心配する人々」と呼んでいますが、彼らにいわせれば景気予想屋は「堤防が決壊してから洪水を心配する人々」なのかもしれません。
景気予想屋の見解&株価予想屋の見解…「目的別」に使い分けよう
上記のように、景気予想屋と株価予想屋は大きく異なるわけですが、優劣があるわけではありません。違う職業だから違うことをしている、というだけなのですから。
情報の受け手が、なんのために景気のことを知りたいのか、それによってどちらの話を聞くかを決めればよいのです。ちなみに、だれがどちらに属しているかを知るのには、「金融政策の話に詳しいか否か」が判断材料になります。詳しければ株価予想屋、そうでなければ景気予想屋だと考えてよいでしょう。
筆者は景気予想屋ですから、仕事中は株価予想屋を批判したりしていますが、趣味で株式投資をしているので、趣味の時間には彼らの話を聞きます。目的によって使い分けているわけです。
ちなみに、景気の予想のほうが株価の予想よりも当たりやすいのですが、それは景気の予想屋が株価の予想屋より優秀だということを意味するものではありません。
景気の予想というのは、景気が上を向いているときには「このまま改善が続くでしょう」といっておけば、高い確率で当たります。一方で、株価の予想は非常に困難です。世界中のプロの半分が株価上昇を予想して買い注文を出し、残り半分が下落を予想して売り注文を出している結果がいまの株価なのですから。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
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