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「予備校選び」は医学部受験の合否を大きく左右する
医学部受験における予備校通いには、主に2つの選択肢があります。大学各学部の受験全般を担う「大手予備校の医学部進学コース」と、医学部受験のみに特化した「医学部専門予備校」です。
受験突破の近道は「自分に合う予備校」を選ぶことですが、そもそも大手と専門とではどのような違いがあるのか、イマイチわからないという声が多く聞かれます。
ここで「自宅から通いやすいから」「費用が手頃だから」といった安易な選び方をしてしまうと、受験失敗に繋がりかねません。
特にコロナ禍で三密が厳しく避けられていた時期は、「近場」で選ぶ傾向が強く見られました。例えば「地方住みの受験生が、地元の予備校に通いながら都内の私立医学部を目指す」といったケースです。しかし、これでは「自分に合っている予備校」ではない可能性があるばかりか、情報力や学習効率という点で、他の受験生に後れをとる恐れまであります。都内私立の出題傾向や対策については、やはり都内現地の予備校のほうが事情通で、講師レベルでアドバンテージがあるからです。
また、経済面を重視するなら授業料も判断材料になるかもしれませんが、合わない予備校へ行って受験生活が長引けば本末転倒です。最終目標は医学部合格なのですから、やはり「学習スタイル」重視で選ぶほうが合理的といえるでしょう。
予備校選びは受験結果を大きく左右します。最短で医学部合格を掴むために、本稿では、大手予備校と医学部専門予備校それぞれの学習スタイル(特徴)・メリット・デメリットを解説します。どちらが合うのかを判断する材料としてお役立てください。
「大手予備校」の医学部進学コース
<学習スタイル/どんな受験生に向いているか>
全学部の受験コースを網羅する大手予備校の授業は、100人を超える生徒が1つのクラスで一斉に学ぶスタイルを取っており、TVやYouTubeに出ているような有名講師の授業も受けられます。たくさんの生徒がいるので、同じ目標に向かって励む仲間が多いほうがモチベーションを保てるタイプや、ライバルがいることで奮起するタイプの受験生に向いている学習環境といえます。もともと成績優秀であり、自ら進んで学習スケジュールを立てる人には、大手予備校はオススメといえるでしょう。
<メリット>
全国に多数の校舎を展開しているため、生徒数が多く、自校で模試も主催しています。全国レベルで自分がどのくらいの順位にいるのかを常に把握でき、志望校合格レベルに達しているのか、おおよその見当もつくので、日々の学習に張り合いが感じられます。
長年培ってきた指導実績をもとに、教材やカリキュラムを定期的に改善できる点も、大手予備校の強みです。模試の日程は自校の講座スケジュールと重ならないよう計画しているので、生徒も受験に向けたスケジュールを組みやすくなります。
<デメリット>
大手予備校は模試結果でシビアに評価し、偏差値を判断基準として受験校の指導を行います。集団授業ですから、より進んだ指導受けるために、生徒は上位クラスに残れるよう努力し続けなければいけません。生徒によっては、これが余計なプレッシャーになったり、学習ペースを乱されてしまったりすることもあります。
さらに、医学部受験は専門性の高いジャンルです。いくら大手予備校が全学部の受験コースを網羅しているとはいえ、全国各地にある校舎すべてに「医学部に特化した講師」を配置するのは困難です。そんな状況下で「自分の受験校に合致した指導ができる講師」に当たる確率は、高いとはいえません。
また、1クラス100人余りの生徒がそれぞれ違った志望校を目指していますが、カリキュラムはクラス共通です。生徒数が多いと講師に質問や個別相談をする機会も限られがちです。科目によっては疑問を解消できず、消化不良を起こしたまま次の学習へ進むこともあり得ます。個別の質問に対してどのように受け答えしてくれるのか、また、個別指導をどの程度まで対応してくれるのかを確認しましょう。
医学部専門予備校
<学習スタイル/どんな受験生に向いているか>
医学部専門予備校の授業は、少人数クラスで行われる講義と、生徒それぞれの学習進度に合わせたマンツーマン指導が特徴となります。少人数なので、生徒一人ひとりに講師の目が届き、勉強の進捗や苦手科目などは個別で把握されます。体調管理やメンタルケアにも配慮されるので、受験に失敗して自信をなくしている浪人生にとっては心の救いになるかもしれません。成績に波があるタイプや、弱点を克服しきれないまま本番を迎えてしまった人、逆転合格を目指す人などは、多角的な指導を受けられる医学部専門予備校が向いているでしょう。
<メリット>
医学部専門予備校には、医学部受験に精通した講師やスタッフがそろっています。予備校としての規模よりも講師陣の質の高さに重きを置いているので、志望校に合った適切な指導が受けられます。講師のなかには、各大学医学部のオープンキャンパスに通って情報収集し、大学ごとの入試傾向をその都度分析している人もいます。
また、医学部入試は受験科目が多く、学習範囲も広域です。大手予備校のように大人数に対して画一的な指導を行う授業スタイルでは、生徒によっては、消化不良の科目があったときに質問したり、振り返ったりする余裕ありません。そのまま新たな学習が積み重ねられていくと、知識の根幹が揺らいでしまいます。少人数指導であればその都度質問でき、自分の弱点克服にじっくりと時間をかけられるので、自分のペースで効率よく勉強することができます。
<デメリット>
医学部専門予備校の授業料は年間200万円以上と、大手予備校(年間120万円程度)と比較して高額です。授業料の高さは、実は受験生本人にとっても負担に感じやすい部分です(支払うのは親であっても、です)。
高額な分、きめ細やかな個別指導に期待できますが、高い授業料を払えば合格が確約されるということではありません。授業料をムダにしないよう、本人も真剣に、前向きに努力することが必要です。
また、大手予備校のように全国に進出しているわけではないため、通える範囲に予備校がない可能性もあります。近年ではオンラインコースを開設しているところも多いですが、遠方からの通塾や、もしくは地元を離れて入学する場合には、交通費や生活費などの費用が学費とは別に発生してしまいます。
ほかにも、模擬試験では大手予備校と協定し一括参加をしているとはいえ、少人数制であるがゆえに「高校のときのような競争が発生しづらい」と考えてしまう生徒にとっては、少人数制はデメリットにもなるでしょう。
自分に合った予備校で、良いスタートダッシュを
勉強は「積み上げ」ですから、スタートダッシュが肝心です。今年惜しくも合格を逃してしまった受験生は、そのまま燃え尽きることなく、ぱっと「次」に切り替えましょう。それが来年の合格に繋がります。
一般的な予備校は4月から12月の間で年間カリキュラムを組んでいます。4月から8月は共通科目の単元学習、9月から12月は入試を意識した演習を行い、受験に臨める万全な態勢を作りあげます。前半の単元学習は、基礎を固めるための重要な時期になりますので、早く通うに越したことはありません。4月以前に始まる「0学期講座」を設けている予備校もあるくらいです。
自分に合う予備校で良いスタートダッシュを切ることができれば何よりです。
亀井 孝祥
医学部受験専門予備校メディカ 代表、数学講師
愛知・東海高校から東京理科大学へ。塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。
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