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医学部合格を掴むための「親の役割」とは?
生徒・親・予備校。医学部受験は、三位一体になって行うものです。もちろん主体は生徒ですが、どこかが欠けてしまえば競争社会のなかで生き抜くことはできません。勉強の手助けは予備校の責任。勉強をするのは子どもたちの使命です。では親として、何をすべきなのでしょうか。
答えは「家族」という立場から、付かず離れず、受験生が合格するその瞬間までを見届けることです。というのも、長年の経験から「家庭からの温かいサポートがあるかないかによって、受験の結果が明らかに変わる」ということを身に染みて感じているからです。
たとえ受験のことはわからなくても、保護者も一緒に情報収集を
勉強そのものについては、プロに任せることが、子どもにとっても保護者にとっても最適でしょう。ただ、予備校任せで保護者の方が受験にまったくノータッチでいると、子どもは1人で戦っているような気持ちになり、心細くなってしまいます。親子関係が良好になると、成績の伸びが変わりますから、孤独を感じないよう、子どものメンタルはしっかり支えてあげることが重要です。
励ますための具体的な方法としては、情報収集を共に行うことが効果的です。たとえば、大学案内を一緒に読んで「いい大学だね」と話題にするだけで、子どもは、ほっとします。オープンキャンパスに着いていくのも「自分のことを見守ってくれている」と感じ、とても効果的です。
「受験のことは母親に任せきり」という父親の方も多いのですが、休日を利用して大学に足を運んでみましょう。「お父さん、受験のことはわからないけど、大学を一緒に見に行こうか」と、ぜひ子どもを誘ってあげてください。
大学見学した日が楽しい1日となって、親子の絆が強まれば、その大学への思い入れも変わってきます。「親に喜んでほしい」と素直に思えれば、その気持ちは必ず、受験勉強の原動力になるはずです。
進路について、親子でじっくり話し合うことも大切
受験のスタート地点ともいえる「志望校選び」において、親子間で意見が割れてしまい、双方の関係に亀裂が入ってしまうケースも多々あります。親子そろってゴールを目指さなければ、受験生の意志がブレてしまう原因にもなりかねません。親の夢を子どもに背負わせていませんか? 子どもの幸せと親の幸せを混同していませんか? 子どもが描く将来について知るために、お互いじっくりと話し合う時間も作りましょう。
バブルを知っている親世代と比べて、現代の子ども世代は無駄遣いをしない、常にコスパを優先するなど堅実な面があります。そのため、自らの進路についても合理的、かつ真剣に考えています。親自身の焦りや不安から心無い言葉をかけるより、子どもを信じて見守ってあげましょう。
ただ、言葉にしなければ伝わらないこともあります。何も言わずに見守ることも必要ですが、子どもが孤独を感じている様子であれば、「何かしてほしいことがあったら言ってね」と、一言声をかけてあげてください。
どんなに心配でも、明るく前向きな言動に徹する
受験生と保護者がコミュニケーションする上で、大切なことは、どんなに心配でも「明るく振る舞うこと」です。受験生は悪い情報に敏感で、悲観的になりやすいです。だからこそ、保護者の方がコミカルな反応を演じることで、心の重荷を解放してあげるのです。子どもの成績がどんなに悪くても、叱ったり、「勉強しろ」と命じたりすることは厳禁です。
たとえば医学部受験生の場合、理数系が得意でも、国語の成績が絶望的に悪いケースは少なくありません。そんなとき、「何でできないの!」と怒るのではなく、たとえば笑いながら成績を見て「ウソ!? ちょっと気分悪くなってきた。横になってもいい?」と膝から崩れ落ちてみるなど、わざと大げさにリアクションするのです。子どもが落ち込むことのないよう、笑いを誘うことが大切です。
保護者の方が明るく振る舞うことで、子どもは「成績が悪いことで家に居場所がなくなる」という心配をせずに済みます。結果、すぐに気持ちを切り替えて、勉強に向かうことができるのです。
悪いイメージを膨らませがちな受験生に対し、その状況を明るく前向きに感じるヒントを投げ掛け続けることが、保護者の隠れたサポートなのです。「朝は数学が苦手。調子が出ない」といった悩みを打ち明けたのなら、「そんなの受け止め方次第だよ。嫌なことが早く終わるんだし、朝から数学でよかったじゃない!」とポジティブに返しましょう。そうしたら、本当に午前中の数学が苦しくなくなり、むしろ得意になっていくことだってあります。
親子関係がうまくいっている家庭は、成績を理由に子どもの存在を否定するようなことがなく、「認めてあげるコミュニケーション」がしっかり行われています。笑顔で「そのままのあなたを愛しているよ」という気持ちを伝えながら、どんな状況も一緒に楽しむことが、かけがえのない励ましになるのです。
過干渉にならないように要注意
親が自分を理解してくれ、応援してくれているという事実だけで受験生はモチベーションを維持・向上することができます。なお、過干渉にはどうか気を付けてください。プレッシャーを力に変えられる生徒はごくわずかです。
いつもどおりに振る舞っているつもりが、気づかないうちに受験生の放つ「受験熱」に巻き込まれてしまうことも珍しくありません。
親がよかれと思ってやっていることが、子どもにとって迷惑だったり、戸惑う原因になっていたりすることもしばしば。本稿の最後に、親として心掛けたいことを3つにまとめました。
①受験に関するアドバイスは一切しない
⇒勉強面のアドバイスは、予備校に任せましょう。親世代の勉強法と子世代の勉強法は大きく変わっていますし、万が一、先生と勉強法の方向性がずれていたりすると、子どももどちらに合わせてよいか戸惑ってしまいます。
②価値観が違うことを認める
⇒数十年前、子どもたちの人気職業はスポーツマンでしたが、今やユーチューバーがトップという時代です。勉強法が変わっていることに加え、社会的な地位の到達点、理想とするビジネス像も、日々変わってきています。子どもが目指すゴールも違えば、受験観や人生観も親とは異なるのです。自分の子どもは分身ではなく、異なる夢や希望を持つ一個人なのです。そのことを認め、わが子の巣立ちを応援してあげましょう。
③子につられてオロオロしない
⇒入試が近づくほど、受験生は精神不安定になっていきます。そんな子どもにつられて親もオロオロしていては、本人もさらに不安になってしまい、よい結果が出せません。親はどっしりと構え、どんな結果が出ても揺るがない精神で、子どもを包んであげてください。
亀井 孝祥
医学部受験専門予備校メディカ 代表、数学講師
愛知・東海高校から東京理科大学へ。塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。
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