昨年までアメリカ、中国に次ぎ第3位を維持していた日本のGDPですが、最新の発表でドイツに抜かれ、4位に転落。2026年にはインドにも抜かれると予測されています。しかし、この状況に嘆くのはまだ早く、10年後には日本は10位にも入らないという予測もあるのです。本記事では、山田順氏の著書『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より、今後の日本経済についての考えをご紹介します。

2075年、日本のGDPは世界のトップ10にも入らない

ここで改めて、世界における日本の経済力の位置を見ておきたい。すでに周知の事実であるが、2023年のドル建ての名目国内総生産(GDP)は、ドイツに抜かれ、世界4位に後退してしまった。


当初のIMFの予測では、2023年から2027年までは日本が第3位を保てることになっていた。しかし、ドル円が150円前後になってしまったので、「その日」は意外に早くやってきたのである。

 

しかし、この日本の後退を円安のせいだとしてしまったら、現実を見失う。なぜなら、通貨の力は、国力、すなわち経済力そのものだからだ。円安は日本の国力の衰退を示しているのだ。

 

日本のGDPは高度経済成長期の1968年に西ドイツを抜き、アメリカに次ぐ世界第2位となった。しかし、2010年に、台頭する中国に抜かれて第3位に転落した。とはいえ、国力の源泉ともいえる人口は、中国は日本の約11倍もあるので、GDPの総額で抜かれたとしても仕方ないと言える。


しかし、ドイツの人口は約8,000万人で日本より約4,000万人も少ないのだ。いかに、日本が稼ぐ力を失ったのかがわかる。

 

出典:IMF
【図表1】2075年までのGDPランキング 出典:IMF
 

2022年12月に公表されたゴールドマン・サックスの未来予測リポート「2075年への道筋」(The Path to 2075—Slower Global Growth,But Convergence Remains Intact)では、いまから約半世紀後の世界各国のGDPが示されている。

 

それによると、2075年のGDP世界第1位は中国(約57兆ドル)で、第2位はインド(約52.5兆ドル)、第3位はアメリカ(51.5兆ドル)となっている。

 

インドは2030年までに日本を抜き、2075年までにアメリカを抜いて世界第2位の経済大国になる。その一方で、日本は現在の第4位から、2040年に第5位、2050年に第6位と“ジリ貧”を続け、その後、急低下して2075年に第12位まで後退する(【図表1】を参照)。

 

この間、日本のGDP成長率は0.0%として試算されているが、はたしてそうなるだろうか? 

 

2075年、日本の上には、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、エジプト、ブラジル、メキシコなど、現在新興国と言われる国々が並んでいる。日本のGDPは約7.5兆ドルで、その経済規模は中国、インド、アメリカの7分の1程度になり、経済大国とは言えない状況に陥る。

 

もちろん、経済は規模ではない。ただ、現在の経済衰退を見ていると、1人当たりのGDPも主要国と比べると大きく低下しているので、日本人そのものが貧しくなっていくのは間違いない。

 

これを止める方策はある。経済規模が小さくとも豊かな国になる方法はある。それは、『国家はなぜ衰退するのか──権力・繁栄・貧困の起源(上下)』が示したように、「収奪的制度」をやめ、「包括的制度」に移行することだ。


自民党政治によるバラマキと借金財政、それによる統制経済、社会主義経済を止めない限り、日本は限りなく衰退していくだろう。
 
 

 

山田 順 

ジャーナリスト・作家

※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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※本連載は、山田順氏の書籍『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より一部を抜粋・再編集したものです。

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