(※写真はイメージです/PIXTA)

「親父のことは嫌いだから、遺産なんていらない」…このような特定の相続人がいた場合、「被相続人の生前に相続放棄の約束を取り付けておこう」と考えるケースはしばしば見られます。ですが、実際にはそう簡単に相続放棄をさせることはできないようです。具体的な事例から、トラブルになりやすい原因と対策を見ていきます。日暮里中央法律会計事務所・三上貴規弁護士が、被相続人の生前におけるあらかじめの相続放棄について、詳しく解説します。

「特定の相続人に遺産を渡さない」のは、簡単なようで難しい

それでは、父が兄に財産を渡すことなく友子さんに全財産を渡したいと考えた場合、どのような方法があり得るのでしょうか?

 

考えられるのは、父が「全ての財産を友子に相続させる」という内容の遺言書を作成しておく方法です。このような遺言書があれば、友子さんが単独でA銀行の預金の払戻手続を行うことができると考えられます。

 

ただし、このような遺言書は兄の遺留分を侵害するものである点に注意が必要です。

 

遺留分とは、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。遺留分を侵害された者は、侵害している者に対して、遺留分侵害額請求権を行使し、侵害額に相当する金銭の支払を求めることができます(民法第1046条第1項)。

 

「全ての財産を友子に相続させる」という遺言書がある場合、兄は遺産の4分の1である1,000万円の遺留分を有しているため(民法第1042条)、遺留分侵害額請求権を行使して、友子さんに対して、1,000万円の支払を求めることができます。

 

父の生前に、家庭裁判所の許可を得て、兄に遺留分を放棄してもらうことは可能ですが(民法第1049条第1項)、兄がこれを拒否する可能性があります。そこで、遺言書で遺留分侵害額請求権を行使しないようお願いしておく方法がとられることもあります。

 

以上のように、特定の相続人に遺産を渡さないという希望を実現するのは、簡単なようで難しいものです。個々のケースに応じてとり得る方法も異なるため、専門家に相談して対策することが重要でしょう。

 

 

日暮里中央法律会計事務所

弁護士

三上貴規

 

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