(※写真はイメージです/PIXTA)

「親父のことは嫌いだから、遺産なんていらない」…このような特定の相続人がいた場合、「被相続人の生前に相続放棄の約束を取り付けておこう」と考えるケースはしばしば見られます。ですが、実際にはそう簡単に相続放棄をさせることはできないようです。具体的な事例から、トラブルになりやすい原因と対策を見ていきます。日暮里中央法律会計事務所・三上貴規弁護士が、被相続人の生前におけるあらかじめの相続放棄について、詳しく解説します。

相続開始前に“あらかじめ相続放棄”はできないのか?

友子さんの兄は、父の生前に、相続放棄することを約束していますが、被相続人の生前にあらかじめ相続放棄をすることはできるのでしょうか?

 

民法では、相続放棄をする場合、自己のために相続開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければならないと定められています(民法第915条第1項、第938条)。

 

このように、相続放棄は、法律上、被相続人が亡くなって相続が開始した後に行われることが想定されています。したがって、相続開始前にあらかじめ相続放棄をすることはできないと考えられています。

 

それでは、口頭の約束だけでなく、相続放棄をするという念書や契約書を作成していた場合はどうでしょうか?

 

このような場合でも、相続開始前に相続放棄をすることはできず、念書や契約書に法律上の効力はありません。

 

以上から、兄が作成した念書によって相続放棄の効力が発生することはなく、父の死後に兄が家庭裁判所で相続放棄の手続をしない限り、兄も相続人となります。被相続人の生前に相続放棄の約束を取り付けておくことで相続放棄の効力が生じると誤解している方がしばしば見られますが、注意が必要なところです。

法定相続分はそれぞれ「2分の1」になるが…

兄が相続人になるとすれば、相続人は友子さんと兄の二人ということになります。

 

友子さんと兄の法定相続分(相続の割合)はそれぞれ2分の1です(民法第900条第4号)。相続人が複数おり遺言書がない場合、相続人全員の同意を得るか遺産分割協議を行わない限り、原則として預金の払戻手続を行うことはできません。

 

友子さんの法定相続分は2分の1ですが、父の預金4,000万円の2分の1である2,000万円についても単独で払戻手続を行うことはできません。

 

したがって、父の預金を払い戻すためには、友子さんと兄で遺産分割協議を行う必要があり、協議がまとまらない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判といった家庭裁判所の手続を経なければなりません。

 

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