「物価高」と「景気低迷」が同時進行する日本…生真面目に貯金をしていると「買えるモノがどんどん減ってしまう」ワケ

「物価高」と「景気低迷」が同時進行する日本…生真面目に貯金をしていると「買えるモノがどんどん減ってしまう」ワケ

物価高と景気低迷が同時進行する、いわゆる「スタグフレーション」に突入している日本。本記事では、山田順氏の著書『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より、スタグフレーション下で起こる具体的なリスクや対抗策について、一部抜粋してご紹介します。

世界各国でストライキが増加…日本で起こる可能性も?

スタグフレーションから、資産を持たない庶民が逃れる手立てはほぼない。しかし、なにもしなければ、生活はどんどん困窮化する。物価上昇が続くかぎり、節約しても限度がある。

 

そこで、2022年の暮れから世界各国で大規模なストライキが起こるようになった。英国では、年末年始に地下鉄、鉄道、バス、飛行機などの交通機関がマヒするストライキが続いた。また、医療関係者も、過去100年間の歴史のなかで最大規模のストライキを行った。看護師労働組合に属する10万人の看護師が19%の賃上げを求めたストライキは、世界中で報道された。

 

看護師労働組合の要求を受けて、イングランドとウェールズ政府はNHS(国民保健サービス)の下で働く職員に対して、平均4.75%、賃金を引き上げると発表した。しかし、英国のインフレ率は10%を超えているので、この程度では〝焼け石に水〟に過ぎなかった。

 

郵便局職員、小中高教員、大学職員なども大規模なストライキを行った。そのため、英国では子どもたちが学校に行けなくなる事態が続いた。

 

フランスでは、年金支給年齢を62歳から64歳に引き上げる法案が発端となって、学校教員の約65%が参加するストライキが起こった。

 

アメリカでも大規模ストライキが続いた。

 

ニューヨークでは、約7,000人の看護師が、賃上げだけでなく看護師の増員を求めて3日間のストライキを行った。その結果、ニューヨーク州看護師組合は、向こう3年間で19.1%の賃上げを勝ち取った。

 

カリフォルニアでは、カリフォルニア大学の大学院生や講師ら4万8,000人が賃上げを求めてクリスマスストライキを行い、25%から80%の賃上げや育児休暇を勝ち取った。

 

このように、スタグフレーションは世界中にストライキの嵐をもたらした。ところが、日本では抗議デモすら起こらない。しかし、スタグフレーションが亢進していけば、やがて日本でも大規模なストライキが起こる可能性がある。そうなれば、これまでの政治・経済システムは地殻変動を起こすかもしれない。

 

こんな状況なのに、不思議なのは、岸田首相も日銀も日本ではまだデフレが続いていると思っていることだ。3月22日、東京株式市場の日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新したとき、首相は記者団にこう言った。

 

「日本経済が動き出し、国内外のマーケット関係者が評価してくれていることを心強く思う。デフレ脱却に向けた官民の取り組みをより加速させたい」

 

デフレ脱却? デフレとは、モノやサービスの価格が全体的に継続し下落する現象である。そんなことは、とうの昔に終わっている。
 

 

山田 順 

ジャーナリスト・作家

 

※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

 

 

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※本連載は、山田順氏の書籍『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より一部を抜粋・再編集したものです。

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