(※写真はイメージです/PIXTA)

1人の相続人だけ多額の生前贈与を受けていた……。この事実が寝耳に水だった場合、納得し難い事態といえるでしょう。生前贈与は税金対策のほか、特定の相続人に確実に資産を渡す目的で行われることもあります。では、財産のほとんどが生前贈与されていた場合に、生前贈与を受けられなかった相続人が対抗する手段はあるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

侵害された遺留分を請求することは可能

特別受益の持ち戻しができない場合でも、遺留分侵害額請求により侵害された遺留分を取り戻せる可能性はあります。

 

(1)遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、遺言や生前贈与により遺留分を侵害された相続人が、遺言により相続や遺贈を受けた人または生前贈与を受けた人に対して、侵害された遺留分に相当する金額の支払いを求めることをいいます。

 

相続人には、最低限の遺産の取得割合である「遺留分」が保障されています。特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の遺言も有効ですが、そのままでは他の相続人は何も得ることはできません。

 

そのような場合、遺留分侵害額請求権を行使することで最低限の遺産を確保することができますので、遺留分侵害額請求は、相続人の遺産相続への期待を保護する制度といえるでしょう。

 

(2)遺留分侵害額請求の流れ

遺留分侵害額請求を行う場合には、一般的に次のような流れになります。

 

①遺留分侵害額請求権の行使

遺留分の侵害が明らかになった場合には、遺贈または生前贈与を受けた人に対して、遺留分侵害額請求権を行使して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求めます。

 

遺留分侵害額請求権の行使は、特別な方法が定められているわけではありませんので、口頭の意思表示でも足ります。しかし、後から時効の点で争われる可能性がありますので、配達証明付きの内容証明郵便を利用して行うのが一般的です。

 

なお、遺留分侵害額請求は、相続開始および遺留分の侵害があったことを知ったときから1年以内に行使しなければなりません。

 

②遺留分侵害者との話し合い

遺留分侵害額請求権の行使をした後は、遺留分侵害者との話し合いにより解決を図ります。話し合いの結果、合意に至った場合には、合意書の取り交わしを行いましょう。

 

③遺留分侵害額請求調停の申し立て

当事者同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停の申し立てを行います。調停は、話し合いの手続きのため、合意が成立しない場合には、調停は不成立となります。遺留分侵害額請求を行う場合、調停は行わずに、すぐに訴訟をすることが多いです。

 

④遺留分侵害請求訴訟の提起

調停が不成立になった場合には、裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。訴訟では、被相続人の財産や遺留分の侵害があったことを証拠によって立証しなければなりませんので、専門家である弁護士のサポートが必要になるでしょう。

 

黙って生前贈与がなされていたケースでは、さまざまな思いが渦巻き、感情的になりやすい事態でもあります。だからこそ、弁護士という第三者の意見を取り入れて、対応策を検討することも一案です。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

萩原 達也

ベリーベスト法律事務所

代表弁護士

 

 

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※本記事は、公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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