(※写真はイメージです/PIXTA)

年金の受給開始時期を遅らせることにより、受給額を増やすことができる「年金の繰下げ受給」。上限年齢は現状75歳、長生きリスクへの予防策にもなり得ります。しかし、メリットだけではなく、請求してから後悔する人も少なくないようで……。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Hさんの事例とともに年金の繰下げ受給の注意点について解説します。

働いているのに年金を繰上げ受給

Aさんは、勤めている会社で定期開催されているリタイア後に向けたライフプランセミナーに初めて参加しました。セミナーには、同世代の職員がたくさん参加しており、セミナー後には何人かで情報交換会をすることができました。

 

情報交換会での話の中心は、現在の生活や働き方について。普段関わりの少ない職員とも話す機会ができて、盛り上がっていました。しかし、しだいに年金受給に変わると、Aさんは耳を疑うことに……。

 

話をしていた5人のうち2人が65歳から、さらに2人は年金を「繰上げ受給」していました。繰上げ制度とは、前段の繰下げ制度と反対に、本来の時期より早く受け取る代わりに、減額した年金を生涯にわたり受給するという制度です。

 

働いて収入があるのにもかかわらず、減額した年金を受給したいという理由を聞くと、自分の家系は短命が多いから、早くに受け取ったほうが「得」だというのです。さらに、元気なうちに旅行等、楽しみたいといった理由から、年金を有意義に使ったほうが得だとみんな口を揃えていいます。

 

人生100年時代なんていわれているが、人はいつ死ぬかわからない。それなら、減額しても早く受け取って元気なうちにやりたいことに年金を使いたい……。確かに、日々の生活の備えをして気を付けていても、新型コロナウイルス感染症や自然災害など、想定外に起こり得るリスクはどうにもならないからです。

 

彼らがいうように、元気なうちに受給するというのも一案ですが、働けなくなったときのことを考えると、65歳時の年金では心細く、増やしておきたい気持ちが強いのに、Hさんは本当にこれでよかったのか、疑問を抱いてしまいました。

年金の受け取り損得…5歳差夫婦の落とし穴

Hさんはさらなる後悔することを知ることに。Hさん夫婦は5歳の年の差があります。Hさんが65歳に到達した際、生計を維持する配偶者がいると加給年金、いわゆる家族手当が年額約40万円加算されます。

 

原則、厚生年金保険加入期間が240月(20年)ある人が対象です。配偶者が原則、65歳になるまで加算されるのですが、Hさんのように、繰下げをしている場合、土台となる老齢厚生年金(報酬比例)が出ていないため、加給年金がつくことはありません。

 

また、年金を受給し始めたから過去の年金を遡って受給することはありません。5歳の年の差であるHさんは、繰下げすることによって、5年分の加給年金、約200万円は受け取れないことになります。

 

70歳まで待つことにより、年額約75万円増やすことができ、2.5年で加給年金分は取り戻せることにことになります。そして総受給額で比較すると82歳以上長生きすると、70歳からの受給がお得になるのです。

 

厚生労働省の「簡易生命表(令和4年)」によると、2022(令和4)年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。Hさんが、平均寿命以上に長生きすると、繰下げしてよかったと喜べるのかもしれません。

 

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