「これ以上なにかを失いたくない」という不安心理が背景に
日本人、日本企業、そして日本国は、バブル崩壊以降、ほとんど国内投資をしなくなった。個人は貯蓄に励み、企業は内部留保を溜め込み、国は借金による公共投資(バラマキ)というケインズ政策で経済を支え続けることに専念してきた。
なにもかも、これ以上失いたくないという「損出恐怖症」にかかり、極力リスクを取らないという道を選んできた。
人には恐怖心がある。合理的に考えれば儲かるとわかっていても、恐怖心が判断を狂わす。これが、「損失回避の法則」で、日本は30年以上、これでやってきたから、経済成長できなかった。
イノベーションは起こらず、株価は上がらず、給料も上がらず、デフレがずっと続いてきた。高度成長で得た富を守りに守って、“ジリ貧”になったのである。
経済成長が止まったのは、人口ボーナスがなくなり、社会が高齢化して活力が失われたことが最大の原因である。しかし、その背景には、「もうこれ以上なにかを失いたくない」という国民の不安心理があったのではないか。とくに、高齢者はこの気持ちが強かった。
こうした見方に納得がいかない方は、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』(楽工社、2011)という本を読むことをお薦めする。
山田 順
ジャーナリスト・作家
※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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