<前回記事>
【対話術】口ベタ上司もマネできる!本音を引き出す「魔法の4文字」【1on1コミュニケーションの専門家が解説】
【質問するときのコツ①】相手に合意を取る
前回は、相手にさらに深くしゃべってもらうための質問として、「具体化質問」「拡大化質問」を紹介しました。
これらの質問を効果的にするコツが2つあります。まず1つ目は、相手の内面を質問によって深く掘っていくときには、相手の「合意(コンセンサス)を取る」ことです。合意なしに、質問によって相手が大事している価値観や隠していた感情に、勝手に焦点を向けられると、嫌な気持ちになる場合があります。相手は「ずけずけと土足で踏み込まれている」と感じるのです。
対話を始める前に「今日は、理想の将来キャリアについていろいろ深堀りして考えていこうと思うんだけどいいかな?」と合意を取るようにすると、相手も聞かれる準備ができてスムーズに進みます。
なぜ、質問されると嫌な気持ちになることがあるのでしょうか。そのためには、質問の性質を理解しておく必要があります。質問とは相手の「思考を方向づける」ことです。たとえば、友人に「どんなタイプの人が苦手なの?」と聞かれたら、苦手なタイプに自分の考えがフォーカスさせられます。自分は、別にそのことを考えたくなかったかもしれないのに、です。さらに、質問は思考を方向づけるだけでなく、「答えを要求」します。もちろん、拒否する自由はありますが、求められているのは答えです。つまり「どんなタイプの人が苦手なの?」という質問は言い換えると、「苦手なタイプの人を教えなさい」と、暗に言っているのです。
要するに、質問とは体のいい「命令」です。ですから、我々が自覚しておくべきは、質問の方向によっては相手に辛いことを強いる可能性があるのだということです。ですから、相手の合意を取っておくことはとても大切です。
【質問するときのコツ②】詰問を探求に変える3つの「感」
たとえば部下の成果が出ていなくて、まだ対策がまとまっていない場合に「先週何やってたの?」「で、これから、どうやって挽回しようと考えてるの?」などと、上司に質問されると、質問が「詰問」と受け取られやすくなります。しかし、質問している側としては、詰問したいわけではありません。質問によって考えて答えてほしいのです。
そもそも質問とは英語で「Question」であり、語源の「Quest」は探求や探索という意味です。つまり、詰めではなく前向きに探求するのが、本来の質問です。
そのために一番大事なことは、相手に関心を寄せることです。本当にその方向のことについて「知りたい気持ちがあるか?」「相手をサポートしたい気持ちがあるか?」というあり方が重要です。
次に、そこから派生する言い方が大事だと私は考えています。その際のポイントを3つご紹介します。1つ目は、間を十分に取る「じっくり感」。2つ目は、相手を性善説で見る「不思議感」。3つ目は、ともに考える「一緒に感」です。
まずは、「じっくり感」ですが、これは十分に間を取りながらじっくりと話を進めることです。相手にとってネガティブなことを息つく間もなくパンパンと質問されると、自分の意図しない方向にどんどん追い詰められている感じがして苦しくなります。
次に、「不思議感」ですが、相手を性善説で見ると、ネガティブな現状の事実に対して「おかしい」「不思議だ」という感覚が生まれます。それを「なぜ、今回成果が上がらなかったんだろうね?(君は成果を上げられる能力があるのに不思議だね?)」という表現で伝えるのです。こう伝えられると「あなたのことを認めています」ということが非言語で伝わるので、相手は安心感が持てます。
最後は「一緒に感」です。「先週何やってたの?」と、一方的に思考させられると、相手は突き放されたような感じがしてしまいます。ですが、そこに「一緒に考えようか?」というニュアンスが入ると安心感が持てるのです。「先週まででできているところを確認しようか?」「これからどんなことができるか一緒に考えていこうか?」という言い方です。
世古 詞一(せこ・のりかず)
組織人事コンサルタント
1on1コミュニケーションの専門家
1973年生まれ。千葉県出身。組織人事コンサルタント。1on1ミーティングで組織変革を行う1on1マネジメントの専門家。早稲田大学政治経済学部卒。
Great Place to Work® Institute Japan による「働きがいのある会社」2015年、2016 年、2017 年中規模部門第1位の(株)VOYAGE GROUP の創業期より参画。営業本部長、人事本部長、子会社役員を務め、2008年独立。コーチング、エニアグラム、NLP、MBTI、EQ、ポジティブ心理学、マインドフルネス、ストレングスファインダー、アクションラーニングなど、10以上の心理メソッドのマスタリー。個人の意識変革から、組織全体の改革までのサポートを行う。
著書に『シリコンバレー式 最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング』(かんき出版)がある。
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