前回は、地域通貨の仕組みについて取り上げました。今回は、主導する組織によって異なる「地域通貨」の導入・運用例について見ていきます。

大きく四つのパターンに分かれる地域通貨の導入例

地域通貨の導入・運用例は、主導する組織によって、大きく四つのパターンに分けることができます。自治体主導でも、実際には地元の団体や企業に運営を委託するケースも多いのですが、「実質的主導・先導」という視点で分けています。

 

(1)民間主導

地元の民間企業が、商店街や商工会などと連携して導入プロジェクトを立ち上げ、運営主体にもなっているパターンです。香川のめぐりんなど。

 

(2)商工会議所・商工会主導

地元の商工会議所や商工会が主導するパターンです。地元の多種多様な中小事業者が参加している団体ですので、地域全体の経済の活性化という趣旨から見ると、地域通貨の主導する組織としては適していると思います。盛岡のMORIO-Jなど。

 

(3)行政主導

自治体が主導・先導するパターンです。自治体が提供している各種行政サービスに対して、地域通貨を発行することは極めて重要です。主導組織パターンがどれであっても自治体の参加は必須です。自治体自体が省庁横断的な多様なサービスをとりまとめて運営主体者であることは難しいと思いますので、その場合は地元団体や企業に委託するケースが多いと思います。苫小牧市、阿賀野市など。

 

(4)協議会主導

地元の企業や団体が集まって協議会などを組織して議論・検討を重ねて合意形成を図るものです。同じ地元の団体・企業という点では同じでも、利害関係や各々が個有の事情を抱えているなかで、協議会での合意形成を試みるものです。このパターンは銚子市の「円卓会議」の先駆的な取り組みが該当すると思います。

目的で分かれる「消費重視型」と「コミュニティ重視型」

また、地域通貨の目的という観点では、地元の経済活性化を重視する「消費重視型」と、地域内のボランティア活動や介護支援などを重視する「コミュニティ重視型」に分けることができます。もちろん、両方を志向することができるのが地域通貨の良さですが、笠間市の「かぽか」などは後者の例として位置づけられます。

 

本連載では、地域通貨・地域コミュニティポイントを先駆的に導入している事例を紹介して、地域通貨の導入の参考にしていただきたいと思います。ただし、どの事例も完成形ではありませんし、当事者の方々は「まだ道半ば」であり試行錯誤を繰り返している段階であるという意識で取り組んでらっしゃることをご理解いただきたいと思います。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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