地方創生の取り組みには、「大切なお金が、その地域内で、目的通りに、予定期間内で確実に利用される仕組み」が求められています。この仕組みの一つの可能性が、地域通貨です。本連載では、地域通貨の多種多様な活用法をご紹介します。

地域経済と地域コミュニティを活性化させるツール

人やお金など地域リソースの「量」は、地域を活性化する上で大切な要素です。ただし、少なければ少ないなりに、足りないなら足りないなりに、地域内の住民や組織が協力し、知恵を絞り、工夫することが大事であり、その前提となる共通のツールが地域通貨だと思います。

 

地域通貨は、人類の経済活動において、物々交換の次の段階ですでに身近な交換手段として自然発生していました。江戸時代の藩札しかりです。地域通貨の歴史の中では、多くの成功も失敗もあります。成功といっても、時代や環境の変化によって、その期待された役目を果たして終了したものも含みますので、「成功の定義」が重要になります。

 

一方では、多くの失敗もあります。地域通貨は、成果をあげるにはいくつかの必須条件が揃わないと成功できません。中途半端な準備のまま始めても、期待された効果は生みません。「試行錯誤して走りながら進める」ことも時には大事ですが、目的と目標(KPI)を明確にした上で、仮説の検証を繰り返し、充実・発展させていくということが大前提になります。

 

地域通貨は、地域に対して二つの面から活性化を促します。一つは地域経済の活性化、もう一つは地域コミュニティの活性化です。大切なことは、この二つが「OR(または)」の関係ではなく、「AND(両方)」であることです。両方を同時に実現することができるという点が地域通貨の特徴です。

 

さらに、円との比較という点では、普段の生活の中で「自分自身のためにいいことをする」という基本的には経済効果を生まないことが、「地域のため、人のためになる」という効果につながる仕組みであることも地域通貨の良さです。

地域通貨の目的は地域内のお金を「循環」させること

では、その仕組みを具体的に見てみましょう。

 

地域通貨の基本的機能は、「地域内のお金をその地域内で循環させる仕組み」です。地方が抱える問題としては人口の流出がよく注目されますが、一方ではお金も地域外に流出しています。しかも、人口は定期的な調査などによって流出度合いが測れますが、お金の流出は目に見えず数値として把握することは難しいので、それだけにかなりやっかいな問題ともいえます。自治体のお金、地元企業のお金、各世帯のお金など、果たしてどれくらいのお金が地域外に出ているのでしょうか。「感覚的に、半分くらいは他に出ているのではないか」と、ある自治体関係者は言います。

 

本書『地域通貨で実現する 地方創生』では、仕事、お金、人という三つのリソースを取り上げ、これらの組み合わせが地方創生に欠かせない要素であることを説明しました。地域経済を活性化していくには、お金を地域内にとどめ、循環させることが大切です。地域通貨は、そのような循環を作り出しやすい通貨といえます。というのも、通貨としての機能をあえて限定することができるからです。

 

私は「地域通貨の三つの限定」により地域内での経済循環が可能になると思います。それは「地域の限定、期間の限定、目的の限定」です。法定通貨の「円」や全国共通商品券のように全国で「共通」して使えるものの方が、汎用性があり、便利だと思うかもしれません。しかし、地域経済への影響という点では、「共通」とは対極にある「限定」が大切なのです。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録