画像:PIXTA

旅するように働き、稼ぐ。リゾート地での仕事を通じて、そんな生活を満喫する人たちがいる。サラリーマンを卒業して精神的に豊かな暮らしを取り戻した人、勤務したリゾート地が気に入って移住してしまった人。リゾート地での仕事を転々としながら日本一周を目指すインフルエンサー。旅するように働く人たちの形はさまざまだ。この連載では、リゾート地での仕事を通じて精神的にも金銭面でも豊かな生活を目指す人たちを紹介する。

外国人との交流も貴重な経験に

リゾートバイトでは副産物もありました。その1つが人とのコミュニケーションです。

 

曽我さんが思い出すのは、箱根の旅館で宿泊したシンガポールから来た50代の夫婦です。配膳でメニューを覚えたての英語で必死に説明していたところ、夫婦の方から「どうしてあなたはそんなに英語を話せるの」などと話しかけてくれ、頻繁に話をするようになりました。

 

曽我さんが「いつかワーキングホリデーでオーストラリアに行きたい」と将来の夢を話すと、夫婦は「息子がオーストラリアにいるので、現地でまた会いましょう」と言ってくれました。

 

宿を出る際には夫婦が手紙をくれ、そのなかには「あなたの接客や前向きな姿勢が大好きです」と書いていたそうです。曽我さんはこの手紙をお守りとして自分の部屋に置いており、今もこの夫婦とフェイスブックのメッセンジャーでやり取りをしているそうです。

 

旅館からも近い箱根強羅公園や箱根神社、芦ノ湖などに行ったのも良い思い出ですが、曽我さんにとってはリゾートバイトで多くの外国人観光客と打ち解けて話すことができたのが何より大きな財産となりました。

 

「仕事を通じて外国人とも仲良くなれる」経験を経て、ワーキングホリデーに行くための自信と心構えが徐々にできたからです。

繁忙期のシフトでは苦労も

とはいえ、苦労がなかったわけではありません。箱根の旅館では繁忙期だったこともあり、朝に数時間、夜に数時間働く「中抜けシフト」が導入されていました。給料は高いのですが、体力的にはつらい仕事です。

 

曽我さんにはこのシフトが合わず、生活リズムが崩れてしまいそうでした。悩んだ末に派遣元のダイブ社の担当者に相談したところ、勤務時間を調整できるか派遣先と交渉してくれました。

 

曽我さんの場合、あくまで目標は海外でのワーキングホリデーの実現です。忙しくても英語の勉強は欠かせません。このため、仕事が終わったあと、海外生活に向けた英語の勉強時間を確保しなければなりませんでした。

 

多くの同僚が休んだり、遠出の旅行を楽しんだりするなか、「きちんと時間の枠を決めてネットの英語講座などを受講した」と言います。

 

23年11月、曽我さんは念願のオーストラリアでのワーキングホリデーに旅立ちました。オンラインで現地の曽我さんと話をしたところ、「いまは日本食レストランで寿司を巻いています」と笑顔でした。

 

さぞや海外生活を満喫しているのかと思いきや、「海外は文化の違いがあり、いまはまだ慣れる段階」だそうです。

 

しかし、「リゾートバイトを経験したおかげで、どうすれば新しい土地でも心地よく過ごせるかを見つけられるようになった」と自信に満ちた表情で語ってくれました。曽我さんにとって、リゾートバイトは「資金」と「経験や自信」を一石二鳥で得られた貴重な場になったようです。

 

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