なぜオンライン診療・服薬指導は広まらないのか?
オンライン診療・服薬指導が普及しない現状を掘り下げてみましょう。
医療機関や薬局にとって、オンライン診療・服薬指導に二の足を踏む最初の原因となっているのが「診療報酬点数が低い」ことです。オンライン診療・服薬指導は、対面に比べると診療報酬が1割ほど低く設定されています。
診療報酬の点数は、医療行為1つひとつに厚生労働大臣が細かく定めています。医療行為に対する価格は、医療行為ごとに決められた点数をもとに「1点=10円」として計算されます。医療スタッフに係る人件費のほか、医薬品・医療材料の購入費、医療機器・機材に係る費用、施設維持・管理費用は主に「診療報酬」から賄っているため、診療報酬点数が低いことが、病院・薬局経営へ悪影響をおよぼすことは容易に想像できるでしょう。
そして、ITリテラシーの高い人材が医療機関と薬局に不足していることも足かせとなっています。医療システムのベンダーやIT人材が支える必要がありそうです。
また、オンライン診療では触診は行えず視覚と聴覚に頼ることもあり、厚生労働省はオンライン診療に適さない疾患・病態をガイドラインで示しています。
さらに、オンライン服薬指導では、医療機関と薬局との連携にいくつか手間が発生します。たとえば患者が「薬はオンラインで受け取りたい」と希望したとしましょう。
すると医療機関は患者が希望する薬局へ「オンライン服薬指導は可能か」と電話などで確認する必要があります。もし対応可能なら、次は処方箋を薬局へ送付します。おまけに送付費用は医療機関が負担します。
ならば「全部システム化したらいいじゃないか」とお考えになるかもしれません。しかしそれはそれで多額の費用がかかるのです。
オンライン診療・服薬指導システムはいくつか存在しますが、どれも導入費用や利用料がかかります。システムによっては医療機関・薬局の導入費用が高額であったり、患者に利用料を請求するものもあるため、慎重に選定する必要があります。
オンライン診療・服薬指導に期待されること
なにかと課題が山積みのオンライン診療・服薬指導ではありますが、日本の医療を支える重要な役目を担っています。
たとえば、すでに実証が始まっているへき地や離島などでのオンライン診療の活用です。
さらに、地域医療でも重要な役割を果たします。超高齢化社会に突入し、医療ニーズは増大する一方です。そこに輪を掛けて人口減による人手不足が起こります。
特に過疎地では医療施設そのものが減っていくでしょう。病院へのアクセスが難しい状況では、オンライン診療による遠隔医療は有効な手段です。医療従事者の負担軽減や業務効率化、そしてコロナ禍での実績のとおり、感染防止への寄与も期待されています。
このように大きな期待を背負ったオンライン診療・服薬指導の成功には、マイナ保険証によるオンライン資格確認と電子処方箋の普及が鍵となるはずです。
電子処方箋システムを利用すれば、引換番号によって薬局で電子処方箋が発行できます。さらに、医療機関と薬局の間で患者情報が共有でき、現在の手間が解消されるでしょう。
加えて、厚生労働省はドラッグストアなどで販売されている一般用医薬品(処方箋なしで買える要指導医薬品)の販売でもオンライン服薬指導を活用するよう準備を進めています。現状では、ちょうど薬剤師・登録販売員が不在のタイミングでは購入できません。
そもそも薬剤師がいない地域もあります。そんなとき患者がどこへ向かうかというと、救急医療であったり、救急車を呼ぶ場合もあります。ですからオンライン服薬指導で一般用医薬品を販売できれば、医療コスト削減につながります。
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