(※写真はイメージです/PIXTA)

家族が揃って過ごし、また明日を元気に迎えるために心身を休める「住まい」。生活の核となるこの空間が、子どもの性格形成に影響を与えるという研究があるそうで、「子どもに悪影響を与える可能性のある間取りもあります」と一級建築士の高原美由紀氏は言います。高原氏の著書『ちょっと変えれば人生が変わる! 部屋づくりの法則』より、子どもの性格形成と間取りの関係性について、詳しく見ていきましょう。

子どもに「悪影響を与える」間取りとは?

子どもに悪影響を与える可能性のある間取りもあります。

 

不登校や引きこもり、問題行動や犯罪を起こしたご家庭の間取りには、ある特徴が見受けられます。さまざまな研究から主なものを挙げると、

 

● 子どもが帰宅して家族に会わずに自室に行ける。
● 家族みんなで食事をしたり集まる習慣がない。
● 家族間で「みんなが集まる場所がどこか」という共通認識がない。
● 子ども部屋と両親の寝室の位置が離れている。
● 子ども部屋のもち方(与え方)が適切でない。

 

 

たとえば、親の寝室もリビングも2階にあって、子ども部屋が1階にあるのはおすすめできません。

 

子どもの出入りに親が気づかない構造だからというだけではありません。子どもは置き去りにされたような感覚になるからです。

 

泥棒や強盗など、家への侵入が多いのは1階からですよね。1階に子ども部屋があり、2階より上にリビングや大人の部屋があると、潜在的に子どもは危険にさらされているような気持ちになります。

 

同様の理由で、家族が住む母屋とは別の「離れ」や、玄関さえも通らずに部屋に入ることができるといった部屋を子ども部屋にしないでください。

 

また、家を建てる際に、「子ども部屋のドアに透明のガラスを入れたい」というご希望をいただくことがあります。理由を聞くと、「子どもが何をしているかわかるから」ということなのです。それには丁重にお断りします。それでは、子どものプライバシーがなく、親からの不信感が子どもに伝わってしまうからです。

 

監視やコントロールはしないけれど、子どもたちのことを大切にしているということを、そっと間取りで表すのです。そういうことを子どもたちは敏感に感じます。

 

かといって、リビングを通らないと子ども部屋に行けない構造にすればいいかというと、単純にそういうわけでもありません。

 

なかにはリビングがすべての部屋の通路になっている家があります。寝室も、子ども部屋も、洗面所もすべてリビングを通過しないと入れない構造です。リビングの四面すべてが出入り口、人の通路です。

 

すると、とても落ち着かなくなりますよね。

 

カフェに入ったとき、みなさんはどこに座りたいですか。窓際の景色のいいところだったり、壁際や奥の隅の席ではないでしょうか。わざわざ出入り口付近に座りたい人はいないでしょう。

 

通路や人の移動が多いところでは、落ち着かないものです。家庭でも同じで、落ち着かないからリビングには出てこずに、個室に引きこもることになります。リビングで食事をしたとしても、食べ終わったらすぐに個室に戻ってしまう、そういう家庭は少なくないのです。 

 

住まいが、子どもの性格形成に影響を与えるという研究もあります。

 

住まいの陽当たりや風通しが悪いと性格が悲観的なこと、リビングが狭く陽当たりが悪いと攻撃性が高いこと、住まいがモチベーションに影響するということなどが報告されています。

 

また、精神科医の石川元先生らは、登校拒否(不登校)の子どもを持つ親が、人と住まいとのよい関係を認識する能力がないことを指摘しています。そして、子どもが自由に学校のことを話せる住まいをつくることが、登校拒否の治療になるとも述べています。

住まいが人を育むのです。

 

私たちは、住まいが家族に与える影響をつかむ感覚や知識を身につけておく必要があるのではないでしょうか。

 

良くも悪くも、住まいが子どもの成長に多大な影響を与えるのです。

 

あなたは子どものころ、どんなところで過ごしていましたか。その住まいであなたは、どんなことを感じましたか。

 

それがあなたの今の性格や行動パターン、家族の会話、家族と過ごす時間や、その内容などに影響を与えているかもしれません。
 

 

高原 美由紀

一社)空間デザイン心理学協会

代表理事

 

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※本連載は、高原美由紀氏による著書『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ちょっと変えれば人生が変わる! 部屋づくりの法則

ちょっと変えれば人生が変わる! 部屋づくりの法則

高原 美由紀

青春出版社

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