住まいは親子の「距離調節ツール」
住まいは親子の距離調節ツールです。
母親がおなかに子どもを宿しているとき、親子の距離はゼロですね。出産で親と子は物理的に分離します。その後、赤ちゃんのはいはいから始まり、成長にしたがって徐々に親子の距離が離れていきます。その距離の調節は子ども主体で行っています。
どういうことかを、引き戸のある家を例に説明します。
10歳未満くらいまでは、子どもは親を確認できるような場所を遊び場に選びます。リビングに隣接して引き戸の部屋があるとすると、親が見えるように引き戸を開けたまま遊びます。
そのうちに、「ちょっとママに内緒でこれやってみようか」なんて冒険心が出て、引き戸を少し閉めて親の死角に入ります。でも、ちらっと親をいつでも確認できる場所にいます。そして、成長に伴って引き戸はだんだんと閉められていき、思春期以降には完全に閉じて自室にこもる、というわけです。
そうして、子どもは家を出て自活するまでの間、親との適度な関係を距離や親との隔たり方で調節していきます。
これは動物として自然な自立のプロセスではないでしょうか。思春期を迎えても親子が分離できずにいると、子どもの心の成長に悪影響がおよぶこともわかっています。
子どもが親との関係を調節しやすいしかけが家にあれば、子どもは自然に自立していくことができます。
言い換えれば、住まいが子どもの自立を応援してくれるのです。
引き戸は開き具合を調節しやすいので、子どもの自然な自立をうながすしかけになるわけです。
子どもが勉強する場所をリビングやダイニングにする場合に、「親が監視する」「コントロールする」ためでは自主性につながりません。
ポイントは親目線ではなく、子ども目線。
親が子どもを監視するためではなく、子どもの主体性にゆだねましょう。
要は、子どもにとって安心できる場所であるかどうか、です。
子ども部屋をもつタイミングは、生物学的に「子どもが親と同じスプーンを使うのを嫌がるとき」。それまでは、親と自分の区別がついていないから、それが子どもの自立のときでもあります。
新しい家を買うと、「この部屋に自分のものを置いて、きれいに片づけなさい」「この部屋で勉強しなさい」などと指示して子ども部屋を「与える」人がいます。そうではなく、「この部屋を使ってもいいよ」と伝えて、子どもにゆだねましょう。
子どもにとって必要な時期に自然に使いはじめます。子ども部屋は「与える」ものではなく、子どもが「もつ」ものなのです。
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