今回は、信託の「受託者」が税務署に提出する調書の概要について解説します。※本連載は、公認会計士・税理士で、税理士法人つむぎコンサルティング代表社員・笹島修平氏の著書、『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ―Q&Aと図解 』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、近年、その活用が益々注目されている「信託」の概要と、取扱いの具体例をいくつか紹介していきます。

税務署に調書を提出しなければならないケースとは?

Q.受託者が税務署に提出する調書

受託者が信託について税務署に提出する資料について教えてください。

 

Answer

受託者は以下の場合に、以下の事由が生じた日の属する月の翌月末日までに「信託に関する受益者別(委託者別)調書」、「信託に関する受益者別(委託者別)調書合計表」を税務署に提出しなければなりません(相法59②)。

 

①信託の効力が生じた場合(当該信託が遺言によりされた場合は、当該信託の引受けがあった場合)

②受益者等(みなし受益者を含む)が変更された場合(受益者等が存することになった場合、又は存しなくなった場合を含みます。)

③信託が終了した場合(信託に関する権利の放棄があった場合、権利が消滅した場合を含みます。)

④信託に関する権利の内容に変更があった場合

 

【「信託に関する受益者別(委託者別)調書」、「信託に関する受益者別(委託者別)調書合計表】

 

資料の提出が必要ないケース

ただし、以下のような場合には、提出の必要がありません(相法59②ただし書、相規30③)。

 

(ⅰ)受益者(注1)別に当該信託の信託財産の相続税評価額(注2)が50万円以下(注3)であること(信託財産の相続税評価額を計算することが困難な事情が存する場合を除きます。)。
(注1)受益者としての権利を有する者がいない場合は委託者
(注2)相続税法22条〜25条までの規定により評価した価額
(注3)上記①〜④の事由が生じた日の属する年の1月1日から当該事由が生じた日の前日までに当該信託と受益者が同一である他の信託について、当該事由が生じていた場合は、当該信託と他の信託の信託財産の相続税評価額の合計額

 

(ⅱ)受益証券発行信託に該当する信託で、受益権が無記名式の信託法185条第1項に規定する受益証券に該当するものである場合

 

(ⅲ)上記①の事由(効力発生)が生じた場合で、以下に該当する場合
・特別障害者扶養信託契約(相法21の4②)に基づく信託
・委託者と受益者等(みなし受益者を含む)とが同一である信託

 

(ⅳ)上記②の事由(受益者等の変更)が生じた場合で、以下に該当する場合
・信託受益権の譲渡等により支払調書及び支払通知書を提出する場合
・受益者等の合併又は分割があった場合

 

(ⅴ)上記③の事由(信託の終了)があった場合で、以下に該当する場合
・信託終了直前の受益者等が、受益者等として有していた権利に相当する当該信託の残余財産の給付を受け、又は帰属する者となる場合
・残余財産がない場合

 

(ⅵ)上記④の事由(信託の変更)があった場合で、以下に該当する場合
・受益者が一の者である場合
・受益者等(法人課税信託の受託者を含む)がそれぞれ有する権利の価額に変動がないこと。

本連載は、2015年10月30日刊行の書籍『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ―Q&Aと図解 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ―Q&Aと図解

信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ―Q&Aと図解

笹島 修平

大蔵財務協会

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