(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●決定内容は予想通り、展望リポートでは物価安定目標の実現確度が徐々に高まっていると指摘。

●植田総裁は会見で確度の高まりの根拠を説明、ただ政策修正の時期に関する手掛かりは示さず。

●4月マイナス金利解除の見方を維持、これに基づけば円が対ドルで大幅に減価する公算は小さい。

決定内容は予想通り、展望リポートでは物価安定目標の実現確度が徐々に高まっていると指摘

今回のレポートでは、日銀が1月22日、23日に開催した金融政策決定会合のポイントを整理し、改めて金融政策の先行きとドル円相場の方向性について考えます。会合では、大方の予想通り、大規模な金融緩和策の現状維持が決定され、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、各社の事前報道通り、2024年度の生鮮食品を除く消費者物価指数の見通し中央値が下方修正されました。

 

ただ、展望リポートの「物価の中心的な見通し」では、「先行きの不確実性はなお高いものの、企業の賃金・価格設定行動の変化や賃金交渉に向けた労使のスタンス等を踏まえると、こうした(消費者物価の基調的な上昇率が物価安定の目標に向けて徐々に高まっていく)見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっていると考えられる。」との文言が、今回新たに記載されました。

植田総裁は会見で確度の高まりの根拠を説明、ただ政策修正の時期に関する手掛かりは示さず

植田和男総裁の記者会見では(図表1)、この確度の高まりに関する質問が相次ぎました。植田総裁は、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数について、2024年度と2025年度とも見通しの中央値が前回(昨年10月時点)と同じ前年度比+1.9%であった点に触れ、前回は見通しに自信が持てなかったが、今回「もう1回点検してみたら同じような見通しが中心的な見通し」となったことを、確度の高まりの根拠と述べました。

 

[図表1]植田総裁の主な発言骨子

 

ただ、マイナス金利解除まで「どのくらい近づいたかという定量的な把握自体は非常に難しい」とし、政策修正の具体的な時期に関する手掛かりを示すことはありませんでした。また、マイナス金利を解除する時には、その後の金利の経路も考慮した上で判断する旨を明らかにし、仮にマイナス金利を解除することになったとしても、「極めて緩和的な金融環境が当面続くということは言える」と発言しました。

4月マイナス金利解除の見方を維持、これに基づけば円が対ドルで大幅に減価する公算は小さい

マイナス金利の解除時期に関する手掛かりは、今回も得られませんでしたが、展望リポートの新規文言や総裁発言を踏まえると、政策修正には着実に近づいていると判断されます。弊社は引き続き4月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃とマイナス金利解除、その後のゼロ金利政策継続を予想していますが、植田総裁がマイナス金利解除時、その後の金利経路を考慮するとしており、利上げへの警戒も必要になりつつあります。

 

しかしながら、利上げの判断はマイナス金利解除後の物価や経済の動向次第であり、まだかなり先になると思われます。なお、会合後のドル円相場は、上下に振れる不安定な動きとなりましたが(図表2)、4月にマイナス金利解除という弊社の見通しに基づくと、日銀の政策要因に起因する円の大幅な減価は見込み難く、1ドル=150円を超えて一本調子にドル高・円安が進む公算は小さいとみています。

 

[図表2]日銀会合前後のドル円レートの推移

 

(2024年1月24日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日銀会合】決定内容は予想通り据え置き…「ドル円相場の方向性」を再考する(解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト)』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【海外活用】12月7日(土)開催
従来の分散投資で資産を守れるのか?
新時代の富裕層が実践する
金融大国「シンガポール」や「フィリピン永住権」を活用した新・資産防衛法

 

【国内不動産】12月7日(土)開催
元サラリーマン大家の現役投資家社長が伝授…
インバウンド需要を逃すな!
《札幌・民泊投資》で勝ち組になる方法

 

​​【国内不動産】12月7日(土)開催
超・減価償却「築古アパート投資」の新発想!
〈節税+家賃収入+売却益〉投資元本2倍のしくみを大公開!

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録