(※写真はイメージです/PIXTA)

国や地域によって人々の暮らしが大きく異なることは、知識として理解してはいるでしょう。しかし、その地域に縁がなければ具体的なイメージは持ちにくく、実際は「想像の及ばない世界」になりがちです。欧州の知性と評されるジャック・アタリ氏は、著書『世界の取扱説明書』(林昌宏訳、プレジデント社)で過去から現在までを分析し、今後30年間の未来予測を行っています。日本に住んでいては見えない「今日の世界」の実態。その一部を、本書より抜粋・紹介します 。

11分に1人、女性あるいは女児が「家族の手で」殺害されている

1900年に15億人だった世界の人口は、およそ83億人になった。

 

12億人以上の出産年齢の女性は、安全な人工妊娠中絶手術を受けることのできない国で過ごしている。1億人の女性は、この手術が完全に禁止されている地域で暮らしている。

 

2021年、アフリカのサブサハラ地域で暮らす15歳から49歳の女性のうち、慣習によって女性器を切除された者の割合は25%だった。

 

女性あるいは女児が、時間にして11分に1人の割合で家族によって殺害されている。

 

15歳から49歳の女性のうち、過去12ヵ月間に性的、身体的な暴力を蒙(こうむ)った者の割合は、10人に1人以上だった。

 

2021年、20歳から24歳の女性のうち、18歳未満で結婚した者の割合は、5人に1人だった(この割合は2001年よりもわずかに減少)。

 

世界において国会議員に女性が占める割合は、いまだに26.4%にすぎない(地方議員では34.3%)。

人類の半数はスマホやパソコンを持っていない

先進国では、平均寿命の延びは頭打ちになった。特定の裕福な社会層や一部の国では、平均寿命は低下している。原因は、新型コロナウィルス感染症の流行だけではなかった。

 

文化の多様性は、相変わらず健在だ。国連に加盟している国の数は193ヵ国だ(さらに、大半の国がコソボとパレスチナを承認している)。世界ではおよそ7000の語が使用されているという(言語の数は、19世紀初頭から減少傾向にある)。だが、実際にはもっとたくさんある。たとえば、インドには1万9569(公式には447)の言語と方言がある。消滅の危機にある言語の数は3000だ(おもにアメリカ大陸とオセアニア)。

 

世界では、大人の半数以上が新聞を読んでいる(紙の新聞が25億人以上、電子版が6億人以上)。

 

ラジオ局の数は4万4000以上、テレビ局の数は3万3300以上ある。テレビの視聴者の数は、およそ53億人だ。フェイスブックの定期的な利用者の数はおよそ30億人、ティックトックは12億人、その中国版のドウインはもっと多い。

 

携帯電話の数は55億台以上、パソコンとタブレットは150億台ほどある(世界の人口を考慮すると、1人当たり2台の計算になるが、人類の半数はこれらのデジタル機器を持っていない)。

 

先進国の年間労働時間は、1950年の1900時間(週当たり36時間)から1400時間(週当たり27時間)になった。言い換えると、先進国の人々の人生に占める労働に費やす時間の割合は、1900年の40%から10%になった。これは大きな変化と言える。

世界で消費されるタンパク質の15%は「昆虫」

毎年、人類は、7億7100万トンの小麦、8億トンのコメ、4億5000万トンの食肉を生産している。

 

世界の食肉1人当たりの年間平均消費量は、鶏肉が15.8キログラム、牛肉が8.9キログラム、豚肉が15.5キログラム、魚介類が19.8キログラムだ。これらの数値はあくまで平均値であり(個人間には大きなばらつきがある)、毎年1%ずつ増えている。

 

大規模に栽培されている植物は30種類にすぎないが、食用植物は3万種類もある。世界で消費されるタンパク質の15%は昆虫だ。世界の食糧生産量の14%は破棄されている。農業は、温室効果ガス排出量の4分の1、森林などの自然破壊の80%、水資源の過剰利用の70%に原因がある。1カロリーの穀物を生産するには10カロリーの石油が必要だ。

 

淡水の年間使用量は、およそ3兆9000億立法メートルだ。1人当たりの計算ではおよそ500立方メートルになる。2000年以降、淡水の使用量は、農業の推移とは関係なく増加している。水不足に悩まされる人口は、年間少なくとも1ヵ月間の場合では27億人、年間を通じての場合では11億人だ。世界の水資源の大半は、南アメリカにある。世界最大の地下水面は、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルにある。また、大きな地下水面は、ペルー、コロンビア、ブラジル西部にもある。次に、オセアニア、東ヨーロッパ、北アメリカと続く。

「奴隷の人口」はかつてないほど増え、推定5200万人に

富の一極集中という傾向が、かつてないほど強まっている。世界の金融資本の4分の3以上を所有しているのは、世界の富裕層上位10%未満の人々だ。経済成長の配分は、富裕層上位1%が55%である一方、貧困層下位80%は5%未満だ。

 

世界の貧困は減少した後、2010年の水準に戻った。貧困が深刻化した地域における女性の社会的地位は、きわめて低い。たとえば、北アフリカや北インドだ。極度の貧困に喘いでいるのは、女性がおよそ4億人、男性がおよそ3億6800万人だ。

 

世界の最貧国49ヵ国は、人口では世界の11%に相当するが、GDPでは世界の2%しかない。これらの国の60%は、債務危機の状態にある。都市部の住民のおよそ3人に1人が貧民窟で暮らしている。8億6000万人が電気を利用できない。彼らのうちの6億人はアフリカのサブサハラ地域、8000万人はインドで暮らしている。世界の人口の半数以上が、医療、教育、飲料水、融資、住宅を満足に利用できていない。

 

およそ8億人(3分の2が女性)が、文字の読み書きができない。6歳から11歳の子供の8%(1億5000万人以上)は、学校に通っていない。アフリカのサブサハラ地域では、この非就学率は20%にもなる。学校に通っている場合でも、ほとんどの場合、一クラスの生徒の数は100人以上であり、学校には充分な教育を受けた教師がいない。

 

中学生の年齢になると、若者の16%は学校に通わなくなる。高校生の年齢になると、すでに3分の1以上の若者が学校教育から離れる。1億5800万人の5歳から14歳の子供、つまり、この年齢層の6人に1人は、就労を余儀なくされる。なぜなら、悪化した交易条件により、親は子供の学費を賄うことができないからだ。奴隷の人口はかつてないほど増え、およそ5200万人と推定されている。

 

ますます多くの人々が移民となって(世界人口の3.5%に相当するおよそ3億人)貧困から逃げ出し、道端や海上で命を落としている(2000年には、世界の人口の2.8%に相当するおよそ1億7300万人)。

 

移民の地域別の行き先の内訳は、ヨーロッパが31%、アジアが31%、北アメリカが21%、アフリカが9%だ。移民の目指す上位2ヵ国は、アメリカ(およそ5100万人)とドイツ(およそ1600万人)だ。

 

これらの国際移民の20%の出身国は、インド、中国、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、アフガニスタンの6ヵ国だ。難民と庇護申請者は移民全体の10%未満であり、彼らのほとんどは、シリア、アフガニスタン、スーダン、ミャンマー、コンゴ民主共和国の出身者だ。

 

 

【著】ジャック・アタリ(Jacques Attali)

1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年フランソワ・ミッテラン大統領顧問、91年欧州復興開発銀行の初代総裁などの、要職を歴任。

政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた。

林昌宏氏の翻訳で、『2030年 ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』『食の歴史』『命の経済』『メディアの未来』(プレジデント社)、『新世界秩序』『21世紀の歴史』、『金融危機後の世界』、『国家債務危機――ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』『危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(いずれも作品社)、『アタリ文明論講義:未来は予測できるか」(筑摩書房)など、著書は多数ある。

 

【訳】林 昌宏

1965年名古屋市生まれ。翻訳家。立命館大学経済学部卒業。

訳書にジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』『食の歴史』『命の経済』『メディアの未来』(プレジデント社)、『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』(いずれも作品社)、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』(吉田書店)他、多数。

 

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    ※本連載は、ジャック・アタリ氏の著書『世界の取扱説明書』(林昌宏訳、プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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