●2024年の米国株は米経済がソフトランディングに至るなか緩やかに水準を切り上げる展開を予想。
●市場で通信サービスや情報技術などの高い利益の伸びが見込まれ世界の半導体市場も回復へ。
●ハイテク株の復調継続で、株価は予想比上振れも、11月の大統領選挙は今後の動向に要注意。
2024年の米国株は米経済がソフトランディングに至るなか緩やかに水準を切り上げる展開を予想
2024年の米国株を展望するにあたり、はじめに米国経済の見通しを確認します。弊社は米国経済について、利上げの累積効果がこの先一段と顕在化し、緩やかな減速が続くとみています。ただ、2024年は5月以降、おおよそ四半期毎に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが3回行われ、景気は軟着陸(ソフトランディング)に至ると予想しています。
このようなマクロ環境のもと、弊社は米国株が緩やかに水準を切り上げる展開を見込んでおり、2024年12月末の着地水準は、S&P500種株価指数が5,000ポイント、ダウ工業株30種平均は39,000ドル、ナスダック総合株価指数は15,650ポイントを想定しています。S&P500指数は、2024年の12ヵ月先予想1株あたり利益(EPS)を248~260ドル程度とみており、株価収益率(PER)19倍近辺で約5,000 ポイントとなります。
市場で通信サービスや情報技術などの高い利益の伸びが見込まれ世界の半導体市場も回復へ
次に、市場が予想するS&P500指数のEPSの伸び率をみると(図表1)、業種別では、通信サービス、情報技術などが高い伸びとなっています。参考までに、通信サービスには、グーグルの持ち株会社アルファベット、メタ、ネットフリックスなどが含まれ、情報技術にはアップル、マイクロソフト、エヌビディアなどが含まれます。また、アマゾン、テスラなどは一般消費財に含まれます。
なお、主要な半導体メーカーで構成する世界半導体統計(WSTS)は11月28日、2024年の世界の半導体市場規模が前年比13.1%増の5,884億ドルと、2023年(同9.4%減の5,201億ドル)から大きく回復し、過去最高だった2022年の5,741億ドルを2年ぶりに更新するとの見方が示されました(図表2)。生成AI(人工知能)向けの演算用半導体などが需要をけん引する見通しで、市場の回復は関連企業にとって強い追い風になると思われます。
ハイテク株の復調継続で、株価は予想比上振れも、11月の大統領選挙は今後の動向に要注意
これらを踏まえると、米ハイテク株の復調が続くことも期待され、2024年12月末にS&P500指数は5,200ポイント、ダウ平均は41,000ドル、ナスダック総合指数は16,800ポイントと、弊社想定レンジの上限程度まで上振れることも十分予想されます。ただ、米大手ハイテク株の時価総額はすでにかなり大きいため、これらの株価次第で株式市場全体が大きく動くこともあり、引き続き注意が必要です。
また、米国では2024年11月5日に大統領選挙が行われます。民主党は現職バイデン大統領の党候補指名が確実な状況で、共和党は支持率でトランプ前大統領が独走しています。現時点では、まだ選挙の材料が少なく、株式市場への影響を推測することは困難です。今後、両党の候補が絞られていく過程で、市場に様々な思惑が生じると思われため、大統領選挙の動向を見極めることは、2024年の米国株を見通す上で、非常に重要です。
(2023年12月22日)
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ハイテク株は「復調継続」が期待される 2024年の「米国株」見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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