「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」それぞれの注意点
年金をいつからもらうかは、自分がどれくらい長生きしそうかで決めることになりますが、その際に、注意したいことがあります。
年金を65歳前にもらう「繰り上げ受給」から見ていきましょう。
1ヶ月早くもらうごとに0.4パーセントの減額になることは前述しました。さらに注意しておかねばならないのは、「年金」にはいくつかの種類があり、これらは同時にもらえない場合があるのです。
これまで書いてきたのは、老後の暮らしのためにもらう「老齢年金」のことですが、このほかに、障害を負った時にもらう「障害年金」、遺族となった人がもらう「遺族年金」、夫を亡くして一定条件を満たしていればもらえる「寡婦年金」といった年金があります。これらは、特定の条件を満たさなければ、同時に受給することはできないのです。
生涯もらえる額が減ってしまい、なおかつこうした年金ももらえなくなる……というのはかなりのダメージです。該当する方はよく考えておいたほうがいいでしょう。
知っておきたい「加給年金」のこと
年金を65歳より後にもらう「繰り下げ受給」の場合には、どんなデメリットがあるのでしょうか。
サラリーマンの方で、奥さんが自分よりも年下だという人も多いでしょう。そういう人が知っておかなくてはいけないのが「加給年金」についてです。
サラリーマンが年金生活に入ると、現役時代よりも収入が減りますから、奥さんに稼ぎがなければ生活が苦しくなります。それを補ってくれるのが、「加給年金」です。「加給年金」は、年下の妻が65歳になって自分の年金がもらえるようになるまで支給される、家族手当のようなものです。
「加給年金」がもらえるのは、厚生年金や共済年金に20年以上加入していて、65歳で年金をもらい始めた時に、夫よりも年下で扶養されている妻や、妻だけでなく、18歳未満の子供や20歳未満で1級または2級の障害を持った子供がいる場合も、それぞれの年収が850万円未満なら対象です。
22年4月より制度が少し変わったので、詳しくは最寄りの年金事務所で相談してみてください。
「加給年金」の落とし穴
「加給年金」の額は、年22万3,800円(2022年度)。さらに、生まれた年によって、特別加算がつきます。たとえば、1943年4月2日以降生まれなら16万5,100円になるので、年額40万円近くになります。
妻が65歳になって、自分の年金がもらえるようになると、「加給年金」はもらえなくなります。その代わり、妻自身の「老齢基礎年金」に、一定額の「振替加算」がつきます。
覚えておきたいのは、「加給年金」は、老齢厚生年金についているということです。老齢厚生年金を「繰り下げ受給」してしまうと、もらえなくなる可能性があります。
サラリーマンの年金は、「老齢基礎年金」の上に「老齢厚生年金」が乗っていますが、ポイントは、それぞれ別々に「繰り下げ受給」ができるということ。
ですから、「加給年金」をつけた「老齢厚生年金」は65歳からもらい始め、「老齢基礎年金」は妻が年金をもらうまで「繰り下げ受給」にしておけば、老後に少し多めに年金をもらうことができるはずです。
荻原 博子
経済ジャーナリスト
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