65歳で「年金月10万円」だったが… 60歳で〈繰り上げ受給〉と75歳で〈繰り下げ受給〉した場合の「受取額」に衝撃【経済ジャーナリストが解説】

65歳で「年金月10万円」だったが… 60歳で〈繰り上げ受給〉と75歳で〈繰り下げ受給〉した場合の「受取額」に衝撃【経済ジャーナリストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

65歳から支給される年金は、「繰り上げ」「繰り下げ」といった制度があり、受給開始時期を調整することが可能です。とはいえ、「年金は死亡した時点で給付が終わるので、その損得も考えなくてはなりません」と“家計の専門家”として活躍する経済ジャーナリストの荻原博子氏はいいます。荻原氏の著書『老後の心配はやめなさい』(新潮社)より、年金で損をしないために知っておきたい考え方を見ていきましょう。

「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」それぞれの注意点

年金をいつからもらうかは、自分がどれくらい長生きしそうかで決めることになりますが、その際に、注意したいことがあります。

 

年金を65歳前にもらう「繰り上げ受給」から見ていきましょう。

 

1ヶ月早くもらうごとに0.4パーセントの減額になることは前述しました。さらに注意しておかねばならないのは、「年金」にはいくつかの種類があり、これらは同時にもらえない場合があるのです。

 

これまで書いてきたのは、老後の暮らしのためにもらう「老齢年金」のことですが、このほかに、障害を負った時にもらう「障害年金」、遺族となった人がもらう「遺族年金」、夫を亡くして一定条件を満たしていればもらえる「寡婦年金」といった年金があります。これらは、特定の条件を満たさなければ、同時に受給することはできないのです。

 

生涯もらえる額が減ってしまい、なおかつこうした年金ももらえなくなる……というのはかなりのダメージです。該当する方はよく考えておいたほうがいいでしょう。

 

知っておきたい「加給年金」のこと

年金を65歳より後にもらう「繰り下げ受給」の場合には、どんなデメリットがあるのでしょうか。

 

サラリーマンの方で、奥さんが自分よりも年下だという人も多いでしょう。そういう人が知っておかなくてはいけないのが「加給年金」についてです。

 

サラリーマンが年金生活に入ると、現役時代よりも収入が減りますから、奥さんに稼ぎがなければ生活が苦しくなります。それを補ってくれるのが、「加給年金」です。「加給年金」は、年下の妻が65歳になって自分の年金がもらえるようになるまで支給される、家族手当のようなものです。

 

「加給年金」がもらえるのは、厚生年金や共済年金に20年以上加入していて、65歳で年金をもらい始めた時に、夫よりも年下で扶養されている妻や、妻だけでなく、18歳未満の子供や20歳未満で1級または2級の障害を持った子供がいる場合も、それぞれの年収が850万円未満なら対象です。

 

22年4月より制度が少し変わったので、詳しくは最寄りの年金事務所で相談してみてください。

 

「加給年金」の落とし穴

「加給年金」の額は、年22万3,800円(2022年度)。さらに、生まれた年によって、特別加算がつきます。たとえば、1943年4月2日以降生まれなら16万5,100円になるので、年額40万円近くになります。

 

妻が65歳になって、自分の年金がもらえるようになると、「加給年金」はもらえなくなります。その代わり、妻自身の「老齢基礎年金」に、一定額の「振替加算」がつきます。

 

出所:『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より抜粋
[図表2]加給年金と振替加算のイメージ 出所:『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より抜粋

 

覚えておきたいのは、「加給年金」は、老齢厚生年金についているということです。老齢厚生年金を「繰り下げ受給」してしまうと、もらえなくなる可能性があります。

 

サラリーマンの年金は、「老齢基礎年金」の上に「老齢厚生年金」が乗っていますが、ポイントは、それぞれ別々に「繰り下げ受給」ができるということ。

 

ですから、「加給年金」をつけた「老齢厚生年金」は65歳からもらい始め、「老齢基礎年金」は妻が年金をもらうまで「繰り下げ受給」にしておけば、老後に少し多めに年金をもらうことができるはずです。

 

 

荻原 博子

経済ジャーナリスト

 

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※本連載は荻原 博子氏による著書『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より一部を抜粋・再編集したものです。

老後の心配はおやめなさい

老後の心配はおやめなさい

荻原 博子

新潮社

親の介護に必要な額が3000万円?! 準備すべき自分の老後資金は2000万?! わずかな年金だって破綻したらどうする?! 増えない貯金、揉める相続、かさむ医療費……その心配、本当にするべきなのでしょうか。不安になるのは知らない…

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