【関連記事】
発達障害の子をもつ親「私の愛情、ちゃんと届いてますか?」に発達支援のプロがアドバイス
2種類の「行動の動機付け」
筆者が発達障害のお子さんたちと触れ合うときは、どうにかして子どもに取り組んでもらう方向で頑張るのではなく、惹きつけてやりたい気持ちを引き出すことを大切にしています。
行動の動機付けは大きくは2つ、内発的動機づけと外発的動機づけに分けられます。内発的動機づけとは「楽しそうだからやりたい」というように、その行動自体が目的になります。外発的動機づけは、「ご褒美をもらえる」「やったらほめられる」というプラスの方向と、「やらないと叱られる」というマイナスの方向もあります。
いずれも行動自体ではなく、行動した結果が動機づけになります。筆者は内発的動機づけを重視していますが、それは学習の定着に大きく影響するからからです。楽しんで取り組んだことや学んだことは定着しやすく応用する力にもつながります。
そして子どもが成長を遂げる中で、「目標に向かってがんばる」「できるようになりたいから努力する」という、内発的動機づけとも単純な外発的動機づけとも異なる、意欲的に自ら行動を決定するという段階が現れます。
社会で生きていくために重要な意識であり、そのためには幼児期に外発的動機づけによって行動を規制しすぎないことも大切だと考えています。
発達障害の子の行動を理解するための「ABA」
ABA(応用行動分析)とは、環境や対応を変えることでどのように行動が変化するかを分析することです。
「強化」「弱化」「消去」の3つの基本原理があります。
【強化とは】
「強化」は行動後に良いことが起こるとその行動が増加するというものです。たとえば、子どもが「ありがとう」と言ったときに褒めることで、その子の礼儀正しい行動を強化することができます。問題行動についても、その頻度が高いようであれば、その行動が望ましい結果によって強化されていると考えられます。
【弱化とは】
「弱化」は行動後に良くないことが起こるとその行動が減少するというものです。たとえば、ストーブを触ったら熱くてやけどをしたのでもう触らなくなったとしたら、その行動は弱化されたということです。
【消去とは】
「消去」は、行動後に何も変化がないとその行動が減少することを言います。たとえば、お母さんに注目してほしくて大声を出したけれど注目を得られなかったので叫ぶことが減ったなどです。
ABAでは行動の理由に目を向けるので、なぜその子がその行動を起こすのかを理解するヒントになります。筆者はABA理論を踏まえて子どもの行動を分析し、対応を選んでいます。問題行動には未然にできる工夫を検討し、子どもの自律的行動を引き出すのです。
行動の原因が分かり、子どもの気持ちを理解できると、「なんでこんなことするの?」とイライラすることを減らすことができるかもしれません。