会社役員とは、経営方針の決定、業務や会計の監査などを担う立場の人を指します。会社法で定義されている会社役員は、取締役・会計参与・監査役の3役です。本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、事例をもとに会社役員に関するエビデンスについて解説します。

形式基準よりも実質基準が重視されたケース

重要情報1

 

〇報酬の限度額を間違えて記載してしまい形式基準で否認された事例
山形地裁昭和38年(行)第2号審査決定取消等請求事件(棄却)(確定)
(TAINSコードZ044-1458)

 

議事録よりも客観的事実が重視され、支給限度額の超過が認められた

(判決要旨一部抜粋)

 

(2)原告は創立総会において「取締役及び監査役の報酬支出の件」が審議され、原告の将来の発展を期してこれら役員に対する報酬は各自年額50万円以内とし、その支出方法は取締役会に一任することに定められたもので、その議事録には単に、「年額50万円内」との記載があるが、これは同議事録作成の際「各自年額50万円以内」と記載すべきところ「各自」の2字を脱落して記載されたに過ぎず、従って支給限度超過額はないと主張するが、

 

イ)右報酬の支出方法については取締役会の議決がなく、税務調査当時にはいまだ限度額の変更がなかったこと、

 

ロ)非常勤役員3名に対し設立以来3年間は全く報酬支給がなく、他の2名の常勤役員に対し設立後3年間に支給された報酬総額はいずれも年50万円に満たなかったこと、

 

ハ)創立総会の本議案の承認状況、

 

ニ)関与税理士が原告会社の事業規模等から年額50万円以内との限度額の定めは役員全員に関するものとして相当であると考えていた事実、

 

ホ)調査担当者に対する原告代表者等の答弁等の事実

 

を総合して考えれば、原告方の限度額に関する定めは役員全員につき定められたものであると認めるのを相当とする。

 

したがって、被告税務署長が3事業年度における原告の役員報酬支給総額のうち限度額50万円を超える部分をいずれも損金に算入せず所得金額として扱ってなした本件各更正決定には何等の違法は存しない。

支給限度額の判定について

「取締役会で定められた支給限度額」より報酬の低い場合、報酬=支給限度額と見なされる

重要情報2

 

〇報酬の限度額を間違えて記載してしまい形式基準で否認された事例
(過大役員報酬/形式基準限度額)取締役会において役員ごとに定められた役員報酬の支給限度額の総額が、株主総会の決議で定められた役員報酬の総額を上回っている場合は、支給限度額が総額で定められている場合として判定することとなり、取締役会決議額を形式基準限度額とすることはできないとされた事例(平20-03-04裁決)
(TAINSコードF0-2-327)

 

議事録の重要性、すなわち株主総会等の開催が重要になります。無数の論点が存在するため、株主総会等の決議の取消しが争点となった事例は確認すべき事項となります。

 

次ページではそもそも株主総会等の決議の取消しが争点となった事例として代表的なものを列挙します。

 

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※本連載は、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 2法人編

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 2法人編

伊藤 俊一

ぎょうせい

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